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第1節 

1 大気汚染の概況

 大気の主要な組成分としては、窒素、酸素、アルゴン、炭酸ガスがあり、そのほか、微量ではあるが、水素、ネオン等の各種の物質が含まれている。この大気に、さらに火山の噴火等の自然現象や人類の活動により、いおう酸化物等われわれにとって好ましくない影響を与える汚染物質がもち込まれる。大気の汚染されている状態とは、広義にいえば、このように正常な大気において通常存在しないような物質が加わったり、あるいは、通常の存在量以上にある物質が増加したりしているような状態をいうものである。なお、近時において長期的に地球的規模の大気汚染の観点から大気中の炭酸ガス等の増加や減少による大気の組成割合の変化や大気にもち込まれる熱エネルギーなどによる大気の性状の変化による影響も注目される。
 しかし、環境汚染問題あるいは公害問題として、環境としての大気中について評価する場合は、大気の汚染が人の生産活動や消費活動に伴って大気中に排出される汚染物質による場合でもあり、かつ、微量ではあってもその汚染物質の種類や、大気中における濃度とその持続時間が、われわれの健康や生活環境に好ましくない影響を与え、あるいは与えるおそれがある場合において、これを大気汚染としてとらえることとしている。この意味において、わが国の最近における大気汚染として一般的に注目されているのは、今日、国民の諸活動の主たるエネルギー源となっている石油、石炭等の化石燃料や鉱石等の原料の燃焼等に伴って発生するいおう酸化物、浮遊ふんじん、窒素酸化物および一酸化炭素による大気の汚染である。さらに、近年各種の汚染物質が太陽の紫外線の作用をうけて、光化学的な反応を起こすことにより、二次的に生成されるオキシダントによる大気汚染が注目されている。
 これらの主要汚染物質について昭和45年度の測定結果に基づき汚染傾向を概観すると次のとおりである。
 いおう酸化物(SOx)については、東京、川崎、大阪等従来汚染の著しかった地域において、44年頃から、汚染の減少傾向が続いているが、いまだ、高い汚染状態を継続しており、また、これらの都市の周辺地域においては汚染程度が漸増しているところもある。
 大気中に浮遊する比較的粒径の小さい粒子状物質である浮遊ふんじんについては、全体的には漸減傾向を示しているが、いまだ高い汚染状態にある。
 窒素酸化物(NOx)については、防止技術の困難性とこれに伴う対策の遅延、エネルギー消費量の年々の増加等を反映し、増加の傾向にある。
 一酸化炭素については、全般的な汚染状況を概観することは困難であるが、交通ひん繁な道路際の測定点の濃度は、年々増加の傾向にあったが、45年には減少している。

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