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第2節 

3 今後の諸問題

 以上のように、企業における環境汚染防止への対応はこの数年かなり進んできている面もうかがわれる。しかしながら、公害の現局面から考えると、次のような諸々の問題点が残されていることは注目する必要がある。
 その第1は、企業行動の基本に関する問題である。つまり、これまでの企業の環境汚染防止の努力は、その活動する場としての地域社会における問題にとどまっていたが、難分解性のプラスチックが大量に生産され消費されてきた結果その廃棄に伴う環境問題がきわめて重大な問題となったり、あるいは最近PCBが深刻な環境汚染の原因として問題化している等の事実に直面するに及び、企業の生産する製品自体がその手を離れてのちまわりまわって大きな環境汚染をもたらすという問題に対しても、企業が研究開発、生産、販売等の段階で、あらかじめ対処する必要が生じてきていることである。
 第2は、公害防止のための投資水準の問題である。すなわち、わが国の公害防止投資が盛り上がりをみせるようになったのはここ数年のことであり、したがってフローとしての量は大きくなってきたが、その蓄積であるストック水準はまだかなり不足しているものと考えられることである。
 ちなみに、日本産業機械工業会の試算によれば、最近の技術水準を採用して理想的な環境を実現するためには、昭和40年から昭和44年までの5ヵ年間に公害防止装置の設置に投資された金額の4倍程度が必要であるとされている。この試算の前提、方法について吟味すべき点はあろうが、ここ数年において急速に伸びてきた公害防止投資比率もこれをもって十分であるとは必ずしもいい難いということを示唆している。
 第3は、企業活動に当たって、環境を良好な状態に維持、管理するための費用を企業コストに折り込んで経営を行なう必要性に迫られていることである。経済規模が小さかった時代には、大気や水のような環境資源に限りがあることは、あまり意識されていなかったが、第2章において述べたような今日の状況のもとでは、環境資源の稀少性がいっそう明確になり、したがってこれを消費する際には、経済的にも当然そのコストは企業経営の中にビルトインすることが要請されてくる。
 その他に、企業内の公害防止組織についての問題点がある。その一つは、まだこうした組織が企業内に充分定着していないことである。通商産業省の調査によれば公害防止組織に配置されている職員のうち、専任職員がいない会社が60%、1〜5人が33%、6〜10人が6%とまだ併任の者が多く、専門的に取り組めるような体制になっている企業はまだ少ないものとみられる。二つは、規模が小さくなるにつれてまだ組織の整備が遅れる傾向がみられることである。この点は、資本金5千万円以上の企業について調査した第3-2-8図からも推測される。

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