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第2節 

7 公害に関するその他の調査研究

(1) 公害保健研究の推進
 公害の人体影響に関する研究は、46年度に引き続いて水俣病、イタイイタイ病および大気汚染による呼吸器疾患等の研究を進めるとともに47年度新規の研究としては、人の感覚に対する公害(悪臭)の影響、PCB等難分解性物質の人体影響、さらに公害の影響によるガン発生の可能性について、それぞれの分野の専門家に委託して研究を進めることとしている。
(2) 調査研究の助成
ア 重要技術研究開発費補助金
(ア) クローズドプロセス技術開発補助
 産業公害の発生を未然に防止しながら産業が円滑に発展する無公害産業社会を実現するため、現在の生産工程(公害源となる物質が生産体系外に排出されるオープンプロセス)を全面的に変換し、公害源となる物質を全く外部に排出しない生産工程(クローズドプロセス)を開発することが必要とされている。
 これに必要な研究開発を助成するため、通商産業省では従来の重要技術研究開発費補助金の一項目としてクローズドプロセス技術開発補助制度(補助率2/3)が創設され、昭和47年度の予算として370百万円を計上し、次の3研究課題の研究開発に着手することになっている。
(a) 水銀を使用しない電気分解法によるカ性ソーダ製造プロセスの開発
(b) 有害な排水(ヘドロ等)を全く排出しない紙パルプ製造プロセスの開発
(c) 重油のガス化によって完全脱硫を行ないガス化した燃料をパイプで供給する無公害コンビナートの開発
(イ) 公害防止技術開発補助
 重要技術研究開発費補助金の公害防止技術開発枠(補助率3/4)は昭和46年度の2億円に対し1億円増の3億円の予算が認められた。本制度により47年度は公害防止技術の研究開発課題として大気汚染防止技術関係の2課題、水質汚濁防止技術の7課題、固形廃棄物処理技術関係の2課題、合計11課題を取り上げ、民間における研究開発の推進を図ることとしている。
イ その他の補助金
 農林省では引き続き都道府県農林関係試験研究機関等の行なう公害研究に対して助成を行ない、また、文部省においては前年度に引き続き科学研究費補助金による特定研究「人間の生存にかかわる自然環境に関する基礎的研究」の助成を行なう他、特定研究に新たな分野として「環境汚染制御」を設けることとしている。
(3) 各種調査研究等
 通商産業省では、昭和40年度以降「産業公害総合事前調査」を実施しているが、47年度においても沖縄金武湾地区を含み、大気汚染および水質汚濁関係につき、それぞれ数地域において新しい観測方法を用いた事前調査を行なう予定である。また「工業標準化調査研究委託費」により47年度においては排ガス中の亜硫酸ガス、大気中の炭化水素、塩素について測定機器の性能および測定方法の調査研究をな行うとともに、前年度実施した大気中の亜硫酸ガス、窒素酸化物、一酸化炭素、粉じんについての調査研究の成果をもとにJIS規格による標準化の準備を進めることとしている。
 文部省では国立大学の公害関係講座学科目の増設、研究施設の新設等を行なうとともに東京大学生産技術研究所において「都市における災害公害の防除に関する研究」を引き続き行ない、また千葉大学においては、新たに「環境科学特別研究経費」により、環境保全に関する総合的研究を行なうこととしている。
 また、運輸省では引き続き交通公害、交通事故の多発等を打開するための「新交通システムの研究開発」等を進めることとしている。
 この他、科学技術庁では「都市環境保全のための基本的方向に関する調査」および「環境保全からみた資源の循環過程に関する調査」を継続実施するとともに新たに「と畜場汚水スラッジの飼料化に関する調査」および「パルプ廃液スラッジの新建材化に関する調査」を実施することとしている。

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