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参考

第1
 大気汚染関係の環境基準
(1) いおう酸化物
 昭和44年2月、公害対策基本法第9条の規定に基づき、わが国最初の環境基準として、いおう酸化物に係る環境基準が閣議で決定された。その基準値は、次に示すとおりである。
 人の健康に関するいおう酸化物に係る環境基準は、次のいずれをも満たすものとする。
(1)(ア) 年間を通じて、1時間値が0.2ppm以下である時間数が、総時間に対し、99%以上維持されること。
(イ) 年間を通じて、1時間値の1日平均値が0.05ppm以下である日数が、総日数に対し、70%以上維持されること。
(ウ) 年間を通じて、1時間値が0.1ppm以下である時間数が、総時間数に対し、88%以上維持されること。
(2) 年間を通じて、1時間値の年平均値が0.05ppmをこえないこと。
(3) いずれの地点においても、年間を通じて、大気汚染防止法に定める緊急時の措置

を必要とする程度の汚染の日数が、総日数に対し、その3%をこえず、かつ、連続して3日以上続かないこと。
 (注)

緊急時の措置とは、大気汚染防止法第17条において、大気の汚染が著しく人の健康をそこなうおそれがある緊急事態(いおう酸化物濃度が、0.2ppm以上3時間継続したとき、0.3ppm以上2時間継続したとき、0.5ppm以上のとき、または48時間平均値が0.15ppm以上のとき)が発生した場合、都道府県知事は一般に周知させるとともに、ばい煙排出者に対する協力要請をすることが義務づけられており、さらに、ばい煙の大口排出者に対する減少勧告をすることができるとされている。
 この基準条件は、年平均値が0.05ppmをこえないことを骨子としている。この環境基準の設定に際し、政府は、これを達成するための対策として、公害防止計画の策定と実施、監視測定体制の整備、低いおう原油や天然ガスの探鉱、開発および輸入の促進、重油脱硫技術および排煙脱硫技術の開発ならびに実用化の推進、重油脱硫装置および排煙脱硫装置の設置の促進等に鋭意取り組むことを明らかにしたが、これらの施策については、44年度からその推進が図られている。
(2) 一酸化炭素
 一酸化炭素の環境基準は、昭和44年12月の厚生省の生活環境審議会の答申に基づいて一酸化炭素に係る環境基準案を作成し、中央公害対策審議会に報告のうえ、公害対策会議の議を経て45年2月20日、この基準の閣議決定を行なったものである。その基準は次のとおりである。
 人の健康に係る一酸化炭素の環境基準は、次のいづれをも満たすものでなければならないとされている。
(1) 連続する8時間における1時間値の平均は、20ppm以下であること。
(2) 連続する24時間における1時間値の平均は、10ppm以下であること。
 このような基準が設定された医学的な根拠については、すでに第2部第1章第4節大気汚染による被害のところで述べたとおりである。
 この環境基準は、一般公衆が常時生活し、活動しているいずれの地域、いずれの場所にも適用されるべきものであるが、車道等もっぱら自動車の走行の用または滞留の用に供されている場所については、適用されない。
 測定方法としては、非分散形赤外分析計を用いる方法を採用するのが望ましい。測定の場所については、局所汚染のみならず、地域汚染をも対象として、一酸化炭素による汚染傾向のは握、人への影響の判定、一酸化炭素汚染防止対策の樹立とその効果の評価等のために、その測定結果を有効に利用できることとなるような場所を選定すべきものとされている。
 一酸化炭素の大気汚染は、その大部分が自動車排出ガスによるものであるので、自動車排出ガス対策が最も重要である。しかし、自動車排出ガス中の一酸化炭素の濃度を引き下げた場合、同排出ガス中の窒素酸化物の濃度が増大することが指摘されているので、今後さらにこれらの点に留意して、他の汚染物質との関連を総合的に検討し、一酸化炭素対策を、自動車排出ガス対策全体の中で正しく位置づける必要がある。
 また、一酸化炭素による汚染の状況は、自動車、道路、交通、気象等の状況によって左右されるので、これらの諸条件を考慮した総合的対策を有機的かつ計画的に推進しなければならない。
 環境基準を達成するために、今後、排出規制の強化、点検整備体制の充実強化、交通規制制度の検討、監視測定体制の整備の推進、調査研究および技術開発の推進等の諸施策を総合的に進めることが必要である。

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