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第5節 悪臭防止対策

 悪臭問題については、これまでその測定方法、防止技術等の開発の遅れなどから、国による一元的な規制立法が見送られてきたが、ようやく最近に至り悪臭に関する研究・防止技術の開発等も一応の水準に達し、主要な悪臭物質について、逐次規制の対象に取り上げることが可能な段階に至っている。悪臭の防止に対する国民の世論の高まりを背景に、これらの研究開発を基礎とし、公害対策基本法の精神に沿って、政府は、昭和46年3月、第65回通常国会に悪臭防止法案を提出した。悪臭防止法案は、工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出を規制するなどの措置を講ずることにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としている。
 同法案によれば、国は、アンモニア、メチルメルカプタン等の不快なにおいの原因となり、生活環境をそこなうおそれのある物質を、工場その他の事業場からその排出を規制すべき悪臭物質として指定するとともに、悪臭物質の種類ごとに、悪臭の強度とそのときの悪臭物質の濃度との関係を基礎として、その排出に関する規制基準の範囲を定め、都道府県知事は、住民の生活環境を保全するため悪臭を防止する必要があると認める住居が集合している地域その他の地域を規制地域として指定するとともに、その規制地域をその自然的・社会的条件を考慮して、必要に応じて区分し、国が設定した基準の範囲内において悪臭物質の種類ごとに、具体的な規制基準を設定することとなる。これらの一般的な措置を基礎とし、都道府県知事は、規制地域内の工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭物質の排出が規制基準に適合しないことにより、その事業場周辺の住民の生活環境がそこなわれていると認めるときは、その事業場を設置している者に対し、その事態を除去するために必要な限度において、改善勧告、改善命令を行なうこととなる。
 悪臭防止法の制定に伴い、その円滑かつ有効な施行を図るために政府は、悪臭に関する研究・防止技術の開発等を関係各省庁において一段と推進することとしている。
 また、悪臭防止施設の設置を促進するために、その整備に関し、租税特別措置法に基づく特別償却制度等の税制上の優遇措置や、中小企業近代化資金による金融上の措置を講ずるための関係制度の整備を行なうこととしているほか、畜産に起因する悪臭を防止するため、畜産団地の造成事業に対する国庫補助、農林漁業金融公庫等による畜産関係悪臭防止施設に対する融資の措置をさらに拡充することとしている。

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