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第2節 

4 産業廃棄物の処理

 産業廃棄物の処理は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律によって事業者が義務として行なわなければならない。具体的には、事業者は、地方公共団体の行なう産業廃棄物の処理義務を利用できる場合を除き、自ら処理するか、産業廃棄物処理業者に委託して処理することになろう。
 事業者は、産業廃棄物の処理にあたっては、産業廃棄物の収集、運搬および処分の基準に従って、有害物質の除去や中和等の前処理を行なったのち、定められた方法によって最終処分としての埋立てまたは海洋処分を行なわなければならない。
 事業者は、産業廃棄物がまだ処分されず工場の敷地内に保管されているときでも、産業廃棄物の保管の基準に従って、それが空気中に飛散したり他所に流出したりしないように保管しなければならない。
 都道府県知事および保健所を設置する市の市長は、その管轄区域内に工場を有する事業者の産業廃棄物の処理および保管の監視にあたるが、工場への立入検査等の業務は、環境衛生指導員が主として担当する。環境衛生指導員は、廃棄物の処理に関する指導の業務を担当するため、とくに都道府県および保健所を設置する市に置かれるもので、通常、保健所ごとに配置されている。
 都道府県知事または保健所を設置する市の市長は、事業者の廃棄物の処理または保管が基準に合致していないと認めるときには、その処理または保管の方法の改善を命ずることができる。
 このように、産業廃棄物の処理は事業者の責任において実施されるものであるが、産業廃棄物の種類によっては、広域的な処理が必要とされるものなどもあるので、都道府県や市町村が産業廃棄物の処理事業に進出するみちも開かれており、とくに、大都市や工業地帯を有する都道府県では、いずれもその準備を急いでいる段階にある。
 しかし、事業者責任の原則にかんがみ、事業者が地方公共団体の行なう産業廃棄物の処理事務を利用する場合においても、事業者は、地方公共団体の設置する産業廃棄物処理施設の設置費、その他産業廃棄物の処理に要する費用の全額を原則として負担しなければならないことになっている。
 都道府県知事が義務として策定する産業廃棄物の処理計画は、都道府県知事が総合的見地から管轄区域内の産業廃棄物全般について、収集から処分までの状況を全体的にとらえて策定されるものであって、産業廃棄物の運搬計画、産業廃棄物の最終処分地の設置計画等をその内容とするものである。
 なお、事業者の産業廃棄物の処理を補完するものとして、産業廃棄物処理業者がある。これは事業者の委託を受けて、産業廃棄物の処理を業として行なう者であるが、収集、運搬および処分の基準に従って産業廃棄物の処理をするためには比較的高度の知識および技能を必要とするので、とくに都道府県知事または保健所を設置する市の市長の認可を受けなければ営業できないものとなっている。

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