前のページ 次のページ

第4節 土壞汚染防止対策

 最近、各地でカドミウムなど重金属類による土壌汚染が大きな社会問題となっていることにかんがみ、重金属類によって汚染された農用地およびそのおそれがある農用地を対象に汚染の原因となっている重金属の種類、賦存量等をは握し、これに対する適切な対策を検討するため、昭和45年度から地力保全対策事業の一環として「障害性物質特別調査」を実施した。
 また、金属鉱山から排出された排出水に含まれる重金属類により汚染された渡良瀬川沿岸の水田の復旧に資するため、現地に調査圃を設け、引き続き調査を実施した。
 さらに、カドミウムなど有害重金属の水田土壌への蓄積に起因して農作物が被害を受けることを防止するとともに、これらの土壌中の有害重金属が農作物に吸収されることを抑制するため、その対策の基準を確立することとし、45年度から3か年計画で碓氷川水域等5地域に対策基準圃を設け、調査を実施した。
 最近におけるカドミウムなどによる土壌の汚染に対処するために、第64回国会において、公害対策基本法の一部が改正され、典型公害の一種として新たに「土壌の汚染」が追加されるとともに、その実施法として、農用地の土壌を重金属等による汚染から保護することにより、人の健康をそこなうおそれのある農畜産物が生産され、または農作物等の生育が阻害されることを防止し、もって国民の健康の保護および生活環境の保全に資することを目的として、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律が制定された。
 本法の概要は、次のとおりである。
 第1に、都道府県知事は、政令で指定された特定有害物質によって人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、もしくは農作物等の生育が阻害されると認められる地域またはそれらのおそれが著しいと認められる地域を農用地土壌汚染対策地域と指定することができることとした。
 第2に、都道府県知事は、この対策地域について農用地の土壌の汚染の防止もしくは除去または汚染農用地の合理的利用を図るための農用地土壌汚染対策計画を定めなければならないこととした。
 第3に、都道府県知事は、対策地域について、土壌の汚染防止の観点から必要があると認めるときは、水質汚濁防止法または大気汚染防止法の規定により、一般の基準よりもきびしい特別の排出基準等の設定等を行なうために必要な措置をとることとした。
 第4に、都道府県知事は、人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産されると認められる農用地を特別地区として指定し、その区域内において、一定の農作物の作付けをしないよう勧告することができることとした。
 第5に、農林大臣は、農用地の土壌が工場または事業場から排出される排出水、ばい煙等に含まれる特定有害物質により汚染されることを防止するため、とくに必要があると認めるときは、水質汚濁防止法等の規定に基づきその防止のために必要な措置をとるべきことを関係行政機関の長に対し要請し、または関係地方公共団体の長に対し勧告することができることとした。
 第6に、都道府県知事は、管内の農用地の土壌の汚染状況に関し調査測定を実施し、これを公表することとした。
 以上のほか、農林省に土壌汚染対策審議会を設置し、農用地の土壌の汚染防止等に関する重要事項を調査審議するほか、国および都道府県は、農用地の土壌の特定有害物質による汚染の防止および除去等に関する研究の推進等の規定を設けた。

前のページ 次のページ