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第3節 

1 厚生省の調査

 厚生省は、45年度に、水銀およびカドミウムの排出源である工場・鉱山等の周辺50地域について、これらの重金属による環境汚染調査を実施した。45年4月に発表された報告は、このうち、32地域について行なわれた米、水田土壌、環境大気、飲料水、河川水および海水、排水、底質、米以外の農作物、魚介類の9項目中のカドミウム濃度に関する調査結果をまとめたものである。
 この9項目のうち、米および水田土壌中の調査結果をみると、まず米については、調査地域29、調査試料数580で、最高値は2.11ppm(福井県大納川流域)、1.0ppm以上の試料がみられたのは5地域(福島県磐梯地域、福井県大納川流域、兵庫県市川流域、島根県唐川川流域および香川県直島地域)、地域ごとの平均値の最高は、島根県唐川川流域の1.03ppm、地域平均値が0.4ppmをこえていたのは3地域(秋田県入見内川流域、兵庫県円山川・市川流域および島根県唐川川流域)であった。また、水田土壌中のカドミウム濃度については、調査地域26、調査試料数565で、最高値は68.7ppm(福島県磐梯地域)、地域ごとの平均値の最高は15.2ppm(福島県磐梯地域)であった。
 厚生省は、この調査地域のうち、福島県磐梯地域については、45年11月「カドミウム環境汚染に係る要観察地域」として、環境汚染調査、住民健康調査等を進めてきたが、今回の調査結果に基づき、次のような措置を講ずることとした。すなわち、ア.1.0ppm以上の米がみられた5地域(福島県磐梯地域ほか4地域)については、当該地域の産米についての食品衛生法に基づく検査を実施するとともに、1.0ppm以上の自家保有米所有者に対しては、当該米を食用に用いないよう指導するほか、必要に応じて住民の健康調査を実施するよう関係県を指導すること、イ.地域の平均値0.4ppmをこえていた3地域(秋田県入見内川流域ほか2地域)については、カドミウムによる環境汚染の精密検査を実施するよう関係県を指導することなどである。

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