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第2節 法規制等

 大気汚染関係では、昭和37年のばい煙規制法以来、法規制が行なわれてきたが、ばい煙規制法が43年に大気汚染防止法となってからも物の燃焼または熱源としての電気の使用に伴い発生するふんじんの規制にとどまり、そのふんじん中の金属成分については間接的に規制されるにすぎなかったが、45年12月の第64回国会における大気汚染防止法の一部改正によって、新たに物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く。)に伴い発生する物質のうち、カドミウム、鉛等について規制することとし、規制基準違反の排出者にはただちに罰則の適用および改善命令等の措置が講じられるほか、物の破砕、選別その他の機械的処理またはたい積に伴い発生、または飛散する物質についても規制するなど規制の強化が図られた。
 水質汚濁関係では、水俣病の原因となったメチル水銀の排出規制が、水質保全法に基づき指定水域について44年2月から行なわれてきたが、45年4月に設定され、同年5月に基準項目が追加された水質汚濁に係る環境基準では、重金属について人の健康の保護に係る基準として、アルキル水銀、カドミウム、鉛、クロム(6価)および総水銀につき、それぞれ基準値が定められた。これを受けて水質保全法の規制が拡充された結果、45年度末において、103水域について重金属に係るものとして、アルキル水銀、カドミウム、鉛、クロム(6価)、クロムおよび総水銀について規制が行なわれている。また、特定の利水目的に応じて、水域によっては、銅、亜鉛、鉄、マンガンなどについても規制が行なわれている。また、第64回国会で成立した水質汚濁防止法は、これまで水質保全法等によって行なわれてきた規制をさらに推し進め、従来の指定水域制を廃止し、全水域を対象に国で一律の排出基準を定め、国の定める排水基準で不十分な場合には、都道府県がよりきびしい基準を条例で定めることができるなど規制の強化充実が図られた。
 近時、カドミウムによる汚染で問題となった土壌汚染は、大気汚染や水質汚濁の結果として生ずるもの、あるいは双方の重合累積によるもののみならず、野積みの廃鉱等による汚染形態もあり、これらにも対処しうることとするため、第64回国会において土壌汚染防止法が制定された(本章第4節参照)。
 このほか、同じく第64回国会で成立した廃棄物処理・清掃法に基づき、事業者の産業廃棄物の処理が義務づけられ、水銀、カドミウムなどの有害物質を含む悪質ヘドロの放縦な廃棄が規制されることとなった。
 以上が、45年度において新設あるいは拡充強化された法規制の内容であるが、その他45年度には従前から鉱山保安法で鉱山および鉱山に附設する製錬所を対象に鉱坑廃水に係る排水基準の告示(これによって定められている金属は、水銀、アルキル水銀、カドミウムなどである。)に基づき、規制が行なわれた。
 以上により、重金属対策は、その法規制面における体制を一応整えることとなった。
 重金属対策関係の環境基準については45年度においてすでに述べたように水質汚濁の環境基準が定められたほか、第64回国会における公害対策基本法の一部改正により環境基準を作るべき公害の類型に新しく土壌の汚染が加えられた。

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