前のページ 次のページ

第5節 

1 自然公園における対策

 国立公園および国定公園の利用者は、近年著しく増加し、昭和44年度において4.5億人をこえるに至っているが、その反面心ない利用者もふえ、その散らかすゴミや、あるいは利用者を受け入れる宿泊施設等の公園利用施設から排出される汚水、さらに無秩序な国土開発等により、自然環境の汚染破壊も著しく進み、あるいは、そのおそれのあるところも各所に見受けられるようになった。
 これらの自然環境の破壊を防止し、これを豊かな人間生活の場として確保するため、第63回国会および第64回国会の2度にわたって、自然公園法の一部を改正して法体系を整備するとともに、自然公園の管理体制の充実強化を図っている。
(1) 自然公園法の改正
 まず第63回国会における自然公園法の改正によって、海中公園制度を創設し、厚生大臣は、海中の景観を維持するため、海中公園地区を指定することができるとするとともに、海中公園地区内における工作物の設置、鉱物、土石の採取、海面の埋め立て、干拓、海底の形状変更等、海中景観を破壊損傷する行為は、制限または禁止することとした。
 また、第64回国会においては、公害対策基本法の一部が改正され、国は緑地の保全その他広く自然環境の保護に努めるべきことを規定したのであるが、自然公園法も、公害対策の一環として、自然環境の汚染を防止し、その保護の強化を図るため一部改正を行なった。
 第64回国会における自然公園法の改正の要点は次の三点である。
 第1は、国、地方公共団体、事業者および自然公園の利用者は、すぐれた自然の保護とその適正な利用が図られるように、それぞれの立場において努力すべき責務を明らかにしたこと。
 第2は、国または地方公共団体は、自然公園内の公共の場所については、その管理者とともに、その清潔の保持に努めることとしたこと。
 第3は、特別地域内の湖沼および湿原ならびに海中公園地区内に、汚水または廃水を排出する行為について、国立公園にあっては厚生大臣の、国定公園にあっては都道府県知事の許可を要するものとしたことである。
(2) 管理体制の強化
 国立公園を管理するための現地機関として国立公園管理員を設けており、現在23国立公園に55人を配置して、自然の風致景観が破壊されることのないように、公園事業者や利用者の指導等の業務を行なっている。
 また、主要な国立公園には、国立公園管理事務所を設置し、管理員を集中駐在させており、45年6月に瀬戸内海国立公園、同年7月に十和田八幡平国立公園管理事務所を新たに設け、管理体制の強化を図っている。
 また、46年度予算においては、自然公園管理費として、新規に自然保護調査費563万円、また、ゴミなどによる自然環境の汚染に対処するため、清掃施設整備補助金1,519万円を計上し、自然環境の保護の強化を図るとともに、不動産購入費として5,000万円計上し、とくにすぐれた自然の風景地は、これを公有化して、自然保護の徹底を図ることとしている。

前のページ 次のページ