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第2節 

1 下水道法の改正

 下水道は、現代の都市にとって欠く事のできない基本的施設であり、その目的は、水質汚濁防止、降雨による市街地の浸水防止、水洗便所化による生活環境の改善等多岐にわたっている。
 とくに水質汚濁防止に果たす下水道の役割は、最も重要なものである。近年の都市地域における人口の集中と工業の飛躍的な発展は、家庭汚水あるいは工場排水が河川、湖沼、海域等の公共用水域に放流されることにより、公共用水域における水質の汚濁が急激に進み、生活環境の悪化と水道水源および農業、工業、水産業等に対する水資源の質の低下をもたらしている。
 この現状に対処するために、昭和45年4月21日に公害対策基本法に基づき水質の汚濁に係る環境基準が閣議決定され、続いて同年9月1日にこの基準に基づく水域類型の指定が49水域について閣議決定され、以後さらに他の水域についても追加指定されてきたのであるが、基準達成のためには、工場廃水の水質規制強化とともに下水道の整備が抜本的対策となるのである。
 また45年8月14日には都市計画中央審議会下水道部会より下水道の整備のための方策に関する答申がなされたが、その答申の内容は、下水道の総合的な水質保全対策としての機能を高く評価し、設定された水質環境基準に対応するための下水道事業の促進の必要性を強調しているものである。
 このような下水道に関する諸般の事情を考慮して、45年12月25日に下水道の公共用水域の水質保全機能を明らかにするとともに、公害対策基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準を達成するための下水道整備の基本計画(流域別下水道整備総合計画)を策定することなどを内容とする下水道法の改正が行なわれた。
 下水道法改正の要旨は次のとおりである。
(1) 下水道法の目的として、公共用水域の水質の保全に資することを明らかにするとともに、水質保全の目的を達成するために、公共下水道は終末処理場を有するか、または流域下水道に接続することを要件とした。
(2) 公害対策基本法に基づき、水質の汚濁に係る環境基準が定められた水域または海域について、都道府県は建設大臣の承認を受けて、その環境基準を達成するために、流域別下水道整備総合計画を定めることとした。
(3) 流域下水道に関する規定を整備し、流域下水道は、もっぱら地方公共団体が管理する下水道により排除される下水を受けて、これを排除および処理するために原則として都道府県が管理する下水道で、2以上の市町村の区域における下水を排除するものであって、終末処理場を有するものとした。
(4) 悪質な下水を排出する者の届出、記録等に関する規定を新設し、その水質の測定を義務づけることとした。
(5) 終末処理場による下水の処理が開始された区域内でくみ取り便所が設けられている建築物の所有者は、処理開始後3年以内に水洗便所に改造する務義を負うとともに、市町村は水洗便所に改造する者に対し、また、国は市町村に対し、それぞれ資金の融通等に努めるものとした。
(6) 下水道使用量について、水量のみならず水質に応じて使用料が徴収できることを明らかにした。
(7) 都の特別区にも、都と協議して、主としてその住民の用に供する下水道の設置、改築等の管理を行なうことができることとした。
 以上のほか、下水道を維持管理する者の資格要件、除害施設等の検査のための立入りなどについて所要の規定を整備することとしている。

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