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第5節 工業立地政策

 大気汚染をはじめとする公害問題の深刻化に伴い、その抜本的な解決策として、工業の配置の適正化を図ることが基本的に重要となっている。すなわち、既成工業地帯でとくに過密・公害の著しい地域については、工業のこれ以上の集中を防止するだけでなく、積極的に工場の地方分散を促進する必要がある。さらに、今後新規に工業地帯として開発される地域については、その地域の開発計画の策定および実施段階において、各種の公害の発生を未然に防止するための対策を折り込むことが必要である。
 このため、通商産業省では、従来から、工場の立地に対する指導および産業立地の適正化のための基礎的調査を実施してきたが、昭和45年度においては、次のような施策を講じ、工業立地面からする公害防止対策の確立を図っている。
 すなわち、第1に、過密・公害の著しい特定の地域から、新産業都市、低開発地域工業開発地区等の工場適地への工場分散を促進することとし、このため、45年度より日本開発銀行および中小企業金融公庫から、その移転に要する資金について特利により融資する制度を創設することとした。
 第2に、これらの分散する工場を適地に誘導するとともに、今後の工業生産の立地基盤を確保するために必要な措置についての検討を行なってきた。とくに、鉄鋼、石油、電力等の基幹資源型産業については、「国土総合開発法」に基づく「新全国総合開発計画」や通商産業省において作成された「工業開発の構想」等で示された工業の適正配置の考え方に基づいて、遠隔の臨海工業適地に、生産面からも公害防止面からも最新の技術を駆使した大規模な公害なきコンビナートを開発することとし、これに必要な基礎調査および産業公害総合事前調査等を実施するとともに、その開発方式について検討が行なわれた。

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