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第4節 

1 多国間協力活動

(1) 国際連合
 国際連合においては、従来WHO、FAO、UNESCO、IMCO、ECE、IAEA等の専門機関がそれぞれの立場から環境問題に取り組んでいるが、環境問題の重要性にかんがみ、1972年6月スウエーデンにおいて人間環境国連会議を開催することを決定している。その準備委員会は日本を含む27か国により構成されているが、これまで1970年3月と1971年2月の計2回開催され、人間環境国連会議において採択が予想される人間環境宣言の作成、常時監視システムおよび海洋汚染防止対策等各国の協力により行なうべき各種の活動に関し活発な検討を行なっている。
 WHOは、大気汚染、水質汚濁等環境汚染防止に関する専門技術者の養成訓練の推進を重視し、各種のセミナーを実施してきたが、最近の環境問題の緊急性および重要性にかんがみ、環境汚染問題を総合的に取り扱う初めての試みとして昭和45年11月から4週間大阪において「WHO環境汚染防止の公衆衛生面に関する地域間訓練コース(WHO公害セミナー)」を厚生省、大阪府および大阪市との共催で行なった。このセミナーには、アルゼンチン、イラン、アラブ連合、ギリシャ、ユーゴスラビア、タイ、韓国等15の発展途上国から環境衛生関係の専門家や行政官各1人と日本から4人の公害担当者の計19人が参加した。研修内容は、環境監視測定体制の企画ならびに設置、環境基準の設定、法規制等の諸問題、環境汚染対策の最近の動向、環境汚染の人体影響等についての講義、検討および大阪府公害監視センター、大阪市の下水処理場等の見学を行なった。また講師陣は、米国ミネソタ大学のストラウブ教授以下日本の専門家を加えて計13人であった。
(2) OECD等
 OECDにおいては、環境問題のもつ経済への影響を重視しつつも現代社会の最大の問題の1つである大気汚染、水質汚濁、騒音等の環境問題の解決を図るため、45年7月環境委員会を設置し、環境問題に関して、加盟国間の情報交換、対策の検討、国際協力等を通じて、適正な環境政策を確立すべく、積極的な活動をはじめており、わが国もこれに参加協力している。
 環境委員会では、従来の環境保全に関する研究協力委員会の研究活動を引き継ぐが、さらに経済成長と環境問題について、多角的、総合的側面から検討することを主要な目的としており、とくに各国の環境政策が国際貿易に与える影響、環境対策の費用と効果の関係等の問題を重視し、工業委員会、農業委員会、貿易委員会、経済政策委員会等との共同作業を行なっている。具体的には、大気管理、水質保全、都市問題、有害物質に関する問題を取り上げ、また早急に検討すべき問題については、特別の委員会を設け、業種別(例、自動車、紙パルプ)の検討を進める方向にある。
 このほかNATO、EEC等においても、環境問題解決のための努力が行なわれている。

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