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第3節 

1 予算

(1) 水質汚濁対策関係
 45年度予算では、公共用水域の水質保全、都市河川の環境整備費等の水質汚濁対策経費14億4,800万円と、下水道の整備経費473億9,900万円が計上された。
 このうち公共用水域の水質保全について、水域指定調査等の水質調査結果に基づき引き続き指定水域の指定および水質基準の設定を行ない、また設定後相当の年月を経ている水質基準の見直しを行なうための経費7,800万円、河川の水質を調査するための経費5,300万円、工場排水の水質を水質基準に適合させるための工場排水処理対策費2,000万円、水産資源保護対策費7,400万円、農業関係水質汚濁対策調査費4,100万円等が計上され、それらの施策の充実を期しており、また、直轄河川および補助河川の都市河川環境整備費8億9,500万円、船舶による海水の油濁を防止するための廃油処理施設整備費2億4,900万円も計上された。
 下水道の整備は、第二次五か年計画(42年度〜46年度)に沿って鋭意促進を図っているところであるが、今後産業、経済の進展に伴い水質汚濁の問題は緊急の課題となってくると思われる。45年度は、第2次五か年計画の第4年次にあたり、総事業費約1,894億円の事業が見込まれ、これに見合う国費473億9,900万円が計上された。
(2) 大気汚染防止対策
 大気汚染防止対策費は、前年度の4億5,200万円に対し、ほぼ2倍の8億8,500万円が計上された。
 大気汚染防止法のばい煙の排出を規制する地域の新規指定およびそのための基礎調査の実施、いおう酸化物にかかる排出基準の遵守を図るためのばい煙発生施設の総点検や、すす、ふんじんにかかる排出基準の改訂強化、特別排出基準の設定の検討、さらに特定有害物質の規制等は、公害監視測定体制の整備とあいまって大気汚染防止上最も重要な施策となるものであり、これらの施策にかかる経費として2億3,600万円、自動車排出ガスの規制のための経費4億1,400万円、学校公害について有効な防止対策の調査研究を行なったうえで学校校舎の公害防止工事を行なうための経費2億3,300万円がそのおもな内容である。
(3) 公害防止のための研究調査
 公害防止のための研究調査については、14億3,900万円が計上された。公害を防止するためには、公害の防止方法、防止技術、計測機器等の開発が急務であり、従来も政府の各種研究機関をはじめ、大学の研究室、民間の研究機関と広く研究が進められているが、なお研究の歴史は浅く、わが国の科学技術の総力をあげて取り組むべき課題であり、政府が重要な役割をはたすべき分野でもある。
 45年度予算では、まず大型プロジェクトとして排煙、重油の脱硫技術の研究費4億2,700万円、大気汚染、水質汚濁の防止技術等の振興費5億8,400万円さらに自動車排出ガスの排出規制に関する研究を行なうため交通安全公害研究所が新設されることとなり、そのための経費3,400万円が計上された。また、公害防止対策樹立のため必要な各種公害に関する調査研究を大学等に委託するための経費等1億2,200万円、農林水産生物の生育環境保全に関する研究費4,200万円が計上された。
 産業公害防止のための調査等については、大規模工業地帯の産業公害を防止するため、地域の地形、気象、土地の自然条件について科学的、総合的調査を実施し、その結果に基づいて適切な公害防止措置等の指導を行なうための産業公害総合事前調査費1億1,300万円、特定有害物使用作業場における作業内容の調査、指導等のための経費1,400万円等が計上された。
(4) その他
ア 公害事業防止事業団の助成
 公害防止事業団は、工場や事業場が集中し、かつ、これらによる事業活動に伴う公害が著しい(または著しくなるおそれがある)地域における公害の防止に必要な業務を行なうために設けられた事業団で、共同公害防止施設等の設置および工場移転用地の造成(造成建設事業)ならびに公害防止施設設置資金の貸付け(融資事業)を行なっている。45年度は、事業団の業務の円滑なる遂行に資するための助成費4億4,400万円が計上された。
イ 公害被害者救済対策
 公害被害者救済制度は、「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」に基づき、公害被害のうちとくに緊急な救済が必要な健康被害について行政上の救済措置を行なうことを目的として、44年12月に発足したものである。45年度予算においては、このための経費として6,700万円が計上された。
ウ 騒音対策
 45年度において、騒音対策の一環として、防衛庁の飛行場周辺の騒音対策事業、生活環境に資する防音事業等に121億1,500万円、民間飛行場周辺の騒音防止事業に18億500万円がそれぞれ計上された。
エ 悪臭防止対策
 市街地およびその近郊に散在する酪農、養豚、養鶏等の畜産経営を集団移転させるため畜産団地の造成を補助することとし、3億700万円が計上された。
オ その他
 その他のおもな経費としては、中央公害審査委員会費3,000万円、公害関係事犯の取締等のための経費4,000万円、保健所の公害行政充実のための経費3,700万円、農薬慢性毒性試験施設の整備費1億円、企業に対する公害防止の調査指導のための経費1億7,800万円、都市計画事業費のうち緩衝緑地事業費補助2億8,000万円等があげられる。

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