前のページ 次のページ

第1節 

1 自然公園等の自然保護

 日本列島は世界にもまれに見る変化に富んだ地形を呈しているが、さらに亜熱帯地方から亜寒帯地方にのびる細長い国土は、季節風地帯に属するために気候は比較的暖かく、年降雨量が大きい。その湿潤な気候は6,000種にも及ぶ多様の植物の繁茂をもたらすのみならず、渓谷、湖水および瀑布などに豊かな水を供給し、地形とあいまってそこに繊細な美しさを持った多様な景観をかたちづくっている。
 これに対し、わが国は巨大な人口と急速に成長しつつある産業経済の発展のため、国土のちゆう密な利用が行なわれ、国土の相当部分が高度に開発されている。そこで、国土の無秩序な利用、無計画な開発が結局、国土を荒廃させ、国民生活に無用の摩擦を生ぜしめている。すなわち、現在、さまざまな形での自然環境の破壊が問題になっているが、本来最も自然状態が良好に保たれていなければならない自然公園内においても湖畔の宿泊施設からの排水等による水質汚濁、自動車利用の増大による大気汚染、騒音、観光集落内における宣伝騒音等の環境破壊が生じている。
 しかし、人間と自然とのふれ合い、すなわち野外レクリエーションに対する需要は今後いっそう増大し、かつ切実なものとなるのであるが、これを満たすための地域を確保し、さらに無計画な開発が行なわれないうちにその用地を拡大確保することは、現代のわれわれにとって必要であるのみならず、後代の国民に対するわれわれの責務である。

前のページ 次のページ