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第2節 

3 産業廃棄物の処理

 産業廃棄物は事業活動の所産であって、その活動規模の拡大に伴う廃棄物量の増大は避けがたいものであり、日量100万トンをこえるものと推計されている。しかも、わが国は狭い地域の超過密下において経済社会活動が行なわれている点に特異性があり、産業廃棄物の蓄積が加速度的に環境汚染を深刻化させつつある現状にあるといえよう。
 この産業廃棄物の実態はまだ十分に明らかにされてはいないが、現在、各都道府県において実態調査が行なわれており、すでに大阪府をはじめ一部の都道府県において結果が報告されている。
 第2-7-4表はそれぞれの都道府県における実態調査に基づいて産業廃棄物の排出源別、処理方法別の数値を推計したものである。
 大阪府においては、おおむね全産業の全廃棄物について詳細な調査を行なっており、1月当たり約250万トンと推計しているが、その内容をみると業種別では製造業20%、建設業58%によって大半が占められており、処理方法別では、そのまま埋立処分のできるものが73%、特別な措置を要するもの20%となっている。
 神戸市を含む兵庫県7都市における結果は、大阪府とほぼ同様の手法を用いた調査であるが、業種別では製造業12%、建設業80%となっていて、建設業のウエイトが大阪府よりも高く、廃棄物全体の90%がそのまま埋立て可能なものとなっている。
 愛知県および東京都の例はいずれも製造業と建設業に重点をおいた調査となっているが、表の示すかぎりにおいては、大阪府よりも兵庫県の傾向に近似している。
 第2-7-5表は、製造業および建設業における産業廃棄物の種類について調べたものであるが、いずれの地域においても廃土砂が圧倒的に多く、大都市における建設活動の盛んな状況が示されている。
 全般的に固形状の不燃物が多く、その他のものとしては、スラツジ類、廃油類、木くずが目だった存在である。
 建設業からの廃土砂、がれき、製造業からの廃油、廃酸、廃アルカリ、スラッジ、スラッグなどの処理処分を、いかにして適正に行なうかということが産業廃棄物処理処分問題のカギとなることは明らかであろう。
 第2-7-6表は、大阪府の調査による産業廃棄物の処分実態を示すものであるが、業者へ委託して処分されている量が多く、しかも委託を受けた業者が、どのように処分しているかはほとんど明らかでない。
 また、45年8月通商産業省は、わが国はじめての全国的規模での産業廃棄物処理処分状況調査を製造業、電気事業およびガス事業の5,000工場を対象にし、2,443工場について調査集計した。これによれば、調査対象工場の44年における産業廃棄物の総排出量は、第2-7-7表のとおり、3,936万トンであった。調査対象工場が全国製品出荷額に占める割合は67%となっているので、調査対象外も含めて上記対象業種の全工場からは、年間5,847万トンの産業廃棄物が発生していると推定される。そして、この数字をもとに推定すると昭和50年におけるこれら業種の産業廃棄物は1億1,000万トンに達すると予想される。
 これを業種別にみると、鉄鋼業、化学工業、電気事業、非鉄金属製造業およびパルプ・紙・紙加工品製造業の占める比重が高く、これら5業種で3,326万トンと全体の84%を占めている。また、廃棄物の性状からみると、炭かす、ダスト類、金属類等の固形状の不燃物が57%と半分以上を占め、次いで泥状、液状の不燃物の1,428万トン、36%となっている。
 また第2-7-8表によれば総排出量の31%に相当する1,233万トンが前処理を行なっており、このうち処理方法では脱水、圧縮等の物理的処理が65%、中和無害化等の化学的処理が25%と多く、対象工場が大規模工場であったためか自社処理が81%を占めている。処分状況では埋立てが全体の半数をこえているが、自社処分量の1/3以上が資源化されている。
 産業廃棄物の種類別処分先別排出状況をみると、自社処分が相当量を占めているが、その内容のおもなものはスラッグ、灰かす、汚泥類であり、処分方法は埋立てに依存している。河川への投棄では廃酸類、汚泥等が、沿岸海域および海洋に対しては廃酸、廃アルカリ、スラッグ、カーバイトかす、汚泥類が、山林原野には灰かす、ボタ類が投棄されていることが調査結果から明らかとなっている。

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