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第1節 

1 土壌汚染の問題

 近年、産業活動の著しい進展に伴い、大気の汚染、水質の汚濁等による公害が各地で発生し、全国的に大きな社会問題となっているが、これら大気の汚染、水質の汚濁等を媒体とした農用地の土壌汚染も最近各地で顕在化しつつあり、これが農作物等の生育障害ばかりでなく、人の健康をそこなうおそれのある農畜産物を生産することの原因となっている。
 土壌の汚染の原因となる物質としては、有機物、無機塩類、重金属類等があげられるが、これらの物質のうち、有機物については、土壌中に存在する微生物により次第に分解され、また無機塩類についても土壌粒子に吸着されたり、土壌溶液に溶解したりするが、これもしだいに作物に吸収されたり、あるいは溶脱流亡により減少し、土壌に残留するものは少ない。
 これに対し、重金属類は、土壌中に長期間残留し、そこに生育する農作物等の生育を阻害したり、あるいは農作物等に吸収され、その結果、人の健康をそこなう農畜産物が生産されることとなるので、土壌の汚染の問題は、現在のところ重金属がその中心になると考えられる。

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