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第1節 

2 悪臭による被害

 悪臭は人に不快な感じをあたえる「におい」の総称であり、悪臭を発する物質は数多くあるが、公害の観点から問題になっている悪臭物質は、刺激性の臭気を有する塩素、アンモニアなどの無機化合物のほか、メチルアミンなどのアミン類、メチルメルカプタン等のメルカプタン類、酪酸等の脂肪酸類、アクロレインなどの有機物が中心である。
 悪臭物質の発生源としては、クラフトパルプ製造業、石油精製業、化学肥料製造業、ゴム工業等の化学工業系統、へい獣処理場、と畜場、獣骨とか魚腸骨等を処理する化製場、養豚、養鶏場、配合肥料工場等の化製場、ごみ処理場、し尿処理場、下水処理場等の清掃系統があげられる。
 悪臭物質による人体影響については、これまで本格的な調査研究はなされておらず、一般的には不快感等の生活妨害としか表面的には認識されていない。もちろん、これらの悪臭物質の濃度が高ければ、皮膚や粘膜を刺激し、せき、たんなどの増加からはじまって頭痛、嘔気、嘔吐さらには気管支炎等の各種の症状を呈する。しかし、これは悪臭としてよりは有害ガスの影響と考えるべきである。
 最近はこれらの悪臭物質に長期間反復暴露されると嗅覚脱失等の嗅覚障害が起こる可能性が指摘されている。また、嗅覚脱失等のような器質的障害だけではなく心理的影響を加味した機能的な影響の集積による二次的悪影響が心配されており、その解明が望まれる。

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