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第4節 

6 工業用水道

 全国の工業用水(淡水補給水)使用量は、昭和43年度には3,603万m
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/日に達しているが、河川からの自家引用のほか工業用水道、上水道による供給分を加えると、このうち約60%がその水源を河川に求めていることになる。一般に工業用水としては水温、水質の点から地下水が最適とされているが、その過剰くみ上げは、地盤沈下等の弊害を伴うおそれがあり、使用可能量には限界があることなどから工業用水道水への需要は急速に増大するものと思われ、工業用水源としての河川水への依存度は、今後ますます高まってゆくものと思われる。
 河川を水源とする工業用水道には、自家用のものと公共用のものがあるが、工業地帯はそのほとんどが河川の下流部にあり、こうした場所では、水質の汚濁により自家用工業用水道の取水が困難なことが多く、また公共の工業用水道についても、良質の水を得るためには河川の上流部からの導水が必要となるなど工業用水道の建設コストの上昇が著しくなっている。また、淀川、揖保川、遠賀川等のようにやむなく汚濁の進んだ河川から取水している例もあるが、いずれも水質の処理に多額の費用を要しており、それでもなお得られる水の質は悪い。
 工業用水道事業では、一般に薬品沈殿までの処理を行なっているが、この方法は、コロイドの除去が主目的で、有機物、金属、酸およびアルカリなどの除去は期待できない。一方、工場等における製造設備にとっては、有機物、生物によるスライム(ゼラチン状の固まり)、塩類、固型物によるスケール(湯垢)、酸およびアルカリによる腐蝕等が問題となることが多いので、河川の水質がさらに悪化すれば、水処理施設の根本的な改善が必要となってくる。

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