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第3節 

2 ヘドロ問題

(1) ヘドロ問題
 「ヘドロ」とは、流れのゆるやかな河川、運河、港湾等の水底に存在する柔らかいどろのことである。このヘドロがもたらす公害の態様としては、特定有害物質を含み、魚介類を通じて人体に影響を及ぼす場合、有機物を多量に含み有毒ガスを放つ場合、魚介類の生息環境を悪化させ、あるいは異臭魚発生の原因となる場合、過度のたい積により港湾機能を阻害する場合等が考えられる。
 45年中に、ヘドロが問題とされた水底の底質の悪化状況は、第2-2-11表のとおりである。これによると、通常の底質にあっては、強熱減量が13%以下であるとされているのに対し、伊予三島港、田子の浦港、洞海湾等ではこれをかなり上回っており、有機物質等を含むどろがたまっているということを物語っている。これらの水域においては、紙・パルプ排水中の有機物質が港に浮遊あるいはたい積し、水産業、航行船舶等に被害を生ずるとか、ヘドロ中に微量重金属が蓄積されるとかいういわゆる「ヘドロ問題」が発生している。
 ヘドロについては、ヘドロと公害との因果関係の科学的究明を急ぐとともに、排水規制によるヘドロの原因物質の流入の防止、たい積したヘドロの除去、除去したヘドロの処分方法等を含めた総合的な対策の確立が要請されている。
 (注) 強熱減量
 強熱減量とは、試料を空気中で強熱したときの重量の減少量であって、通常、重量百分率で表わし、どろの場合、試泥中の有機物質炭酸塩等が多ければ強熱減量も大きくなり、含有有機物質等の推定に役立つ。瀬戸内海の天然の海底泥は、強熱減量13%以下といわれている。


(2) 田子の浦港
 静岡県下の田子の浦港では背後地に多数のパルプ工場をかかえ、その排水が周辺の水田におよぼす被害を防ぐことを目的として昭和26年から特別都市下水路が建設されている。
 しかしながら、終末処理場の建設がおくれているため、多くの排水が未処理のまま港内に放流され、それに伴う港内の悪臭が問題となっていた。
 これに対して静岡県では従来から港内のしゅんせつを実施してきたが、しゅんせつ汚でいの投棄場所における水産被害が懸念され、中止のやむなきに至った。
 この間も港内の汚でいのたい積は進行し、港湾機能がまひ寸前になったばかりか、汚でいから発生する硫化水素により付近住民の健康に対する影響が懸念されるようになった。
 また港外海域はサクラエビの好漁場となっているほか、各種漁業が行なわれており、汚濁が港外へ広がることも懸念されるようになった。
 これに対して、国ならびに静岡県では発生源の排水水質の改善と港内の蓄積汚でいの除去の両面からの検討を続け、発生源の排水水質の改善については、45年10月に水質保全法に基づき浮遊物質(SS)についての水質基準が設定され、46年7月から適用されることになった。他の水質項目の基準についても現在検討中であり、近く設定される予定である。
 一方、港内の蓄積汚でいの除去については、当初、しゅんせつ汚でいを外洋に投棄する方針で関係各機関と協議が続けられたが、水産被害への安全性が確保できないため、陸上処理を行なう方針で検討が続けられているところである。

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