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第2節 

4 湖沼

 湖沼は、自然の状態においても、長い年月を経るうちに、窒素、燐等の栄養塩類の濃度が高まり、いわゆる富栄養化され、汚濁が進行する。浅い湖沼ほどこの傾向は著しく、化学的酸素要求量(COD)は高い値を示す。また、湖沼によっては、もともとその水質が酸性またはアルカリ性を示しているもの、あるいは腐蝕植物がたい積しているものなどがある。
 近年における湖沼の水質汚濁の特徴は、富栄養化が自然状態に比べて著しく促進されているものが現われてきたところにある。すなわち、有機性の工場排水、家庭下水、農業排水等の湖沼への注入により、窒素化合物、リン酸化合物等の栄養塩が流入し、湖水中の生物の繁殖成長を促すとともに、生物体内に移行することによって湖水に蓄積され、これがふたたび栄養塩として湖水の富栄養化を促す。そして、この富栄養化のテンポが、産業開発、人口の増大あるいは観光開発等による有機性排水の著しい増大により、水の滞留時間の長い湖沼にあっては、とくに加速される。諏訪湖、琵琶湖(南湖)、印旛・手賀沼等の湖沼において、この傾向は顕著にみられる(第2-2-10表参照)。とくに、諏訪湖については、湖底が浅いこともあってプランクトンが繁殖し、「アオコ」といわれる青色の浮遊物が一部の湖面をおおい、湖の景観をそこなうまでに富栄養化が促進され、湖沼の末期的症状にあるといわれている。また、河口湖、芦の湖等山間地の湖沼においても、沿岸の旅館、レジャー施設等からの排水により富栄養化が進行し、透明度が低下しているものがある。
 富栄養化の促進という一般的な汚濁のほかに、湖沼によっては特殊な重金属物質等による汚濁が問題とされているものもある。

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