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第3節 

1 大気汚染

 大気汚染の動向は、汚染物質の種類ごとに複雑な様相を示しているが、懸命な対策の推進にもかかわらず、全体的には汚染の度を深めながら、汚染地域の範囲を拡大しており、これまでの法制や防止技術による対策の限界がうかがえた。
 すなわち、昭和45年には、5月の東京都新宿区牛込柳町における鉛汚染事件、7月の東京都杉並区等における光化学スモッグ事件等未規制物質に起因する新たな公害が発生し、国民に大きな衝撃を与えるに至った。規制対象物質による汚染の状況をみると、従来最も主要な大気汚染物質として対策が集中されていたいおう酸化物については、規制の強化等の効果により、代表的な高濃度汚染地域であった川崎市、四日市市等においては汚染の減少がみられたものの、尼崎、和歌山、海南、川口、大分等の各市においてはなお汚染が高まる傾向にあり、とくに東京、大阪等の大都市の一部地区においては、今なお高レベルの汚染状況が継続している。44年度においては、全国213常設測定点(このうち1点欠測)のうち環境基準に不適合の測定結果を記録した測定点は82か所を数え、全測定点中に占める不適合測定点の割合は39%あり、43年度の37%(全測定点172か所)よりも若干ではあるが高まった。また、44年度までに3年連続して環境基準に不適合の測定値を記録した測定点を有する都市数は、東京、大阪等17都市を数えている。
 いおう酸化物とともに従来からばい煙として規制が行なわれていたふんじんのうち、浮遊ふんじんは微増の傾向にあり、降下ばいじんによる汚染は、過去3年おおむね横ばいの状況にある。
 また、モータリゼーションの進展に伴い交通量の多い大都市の道路周辺地域等においては、一酸化炭素による汚染がさらに進行している。
 光化学スモッグの起因物質の一つとしても注目されている窒素酸化物による汚染の状況は、東京都内3か所の調査結果によっても逐年増加の傾向がうかがえる。

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