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第6節 

4 通商産業省

 通商産業省においては、今後急速に工業化の進む新産業都市や工業整備特別地域等の新規で大規模な工業地帯ならびに既成工業地帯であって大気汚染の著しい地域について、模型実験を含めた科学的かつ総合的な手法を用いて昭和40年以来、大気関係について全国の25地域および水質関係について全国の18地域について産業公害総合事前調査を実施し公害の未然防止に多大の成果をあげてきたが、45年度においては、さらに全国で大気8地域、水質6地域について調査を実施する予定である。
 なお、同調査を実施した地域については、調査後の企業立地等の計画変更によって生ずる公害面への影響を電子計算機を用いて迅速に調査することにより、当該地域の公害防止計画の策定実施に資するとともに、今後における大気汚染および水質汚濁の予測のスピードと精度の向上等を図ることを目的とする大気汚染予測システムおよび海域汚濁予測システムの開発実用化を図ることとしている。
 なお、新たに工業地の予想される瀬戸内海全域の水質汚濁を未然に防止するための予防調査を行なうことにした。
 工業技術院においては、資源技術試験所を公害資源研究所(仮称)に改組し、公害防止技術の研究をいっそう強力に推進するための体制整備を行なうこととしている。
 また、研究開発については、大型プロジェクト制度により研究開発を進めている。脱硫技術については、排煙脱硫技術の研究開発は44年度をもって、本制度による研究開発を完了したが、45年度においては、重油直接脱硫技術について引き続き、テストプラントの製作および据え付けを行ない、これに続いて運転研究を行なうこととしている。
 工業技術院試験研究所における技術開発は、大気汚染防止技術については自動車排出ガスによる大気汚染の防止に関する各種研究およびばい煙等の拡散に関する研究、排水処理技術については、石油、石油化学系排水、パルプ排水、重金属含有排水、染色排水、総合排水等の処理技術について一層の推進を図るほか、その適用範囲の拡大と処理の高度化を図るため、これらの基礎となる微生物による排水処理技術、各種物理化学的処理技術、排水処理の自動管理技術、排水の拡散に関する研究、騒音振動防止技術および各種計測法、悪臭防止技術、汚泥処理技術等の研究を前年度に引き続き積極的に推進することとするほか、産業廃棄物処理技術については、45年度において新たに、プラスチック廃棄物の処理技術の研究について、機械試験所、資源技術試験所、東京工業試験所の協力のもとに、プラスチック専用破砕機の開発、燃焼およびガス化処理技術の研究、燃焼およびガス化処理において発生する有害ガスの分析法の確立等から成る総合的な研究に着手することとした。
 なお、産業廃棄物処理の基本的な方向については、産業構造審議会産業公害部会において、また、プラスチック廃棄物処理に関する基本的な方向については、軽工業生産技術審議会において引き続き検討を進めることとする。
 工業技術院試験研究所において、45年度に行なわれる特別研究の項目および予算額は第5表のとおりであり、自動車排出ガス防止技術の研究等について充実強化することとしている。
 また、技術開発研究費補助金、重要技術研究開発費補助金、技術改善費補助金の運用にあたっては公害防止技術の開発を重要研究課題の一つとして積極的にとりあげる方針である。
 産業公害の防止については、工業標準化の面においても、これを重点項目として、積極的にJIS規格の制定改正とこれに必要な調査研究を進めることとしている。
(1) JIS規格の制定・改正
 45年度中に公害防止の見地から制定・改正をすることとしている規格は次のとおりである。


 (制定)
?工業用水工場排水試料採取方法
?排ガス中の一酸化炭素分析方法
?自動車排出ガス用簡易測定器
?自動車用スモークメータ
?空気中水中の放射線濃度の求め方
 (改正)
?燃焼排ガス中の全いおう酸化物分析方法
?工場排水試験方法
?道路排ガス中のばいじん量測定方法
?自動車雑音防止用高圧抵抗線
(2) 工業標準化調査研究委託
 工業標準の対象の高度化、複雑化に対応して工業標準化原案を作成するにあたっては、科学的な方法に基づく調査研究を行ない、基礎的データをは握しておくことが必要である。
 公害防止に関しては、44年度から大気汚染防止のための集じん装置の性能試験方法確立のための委託調査研究を行なってきたが、引き続き本年度は、ろ過集じん装置と電気集じん装置について調査研究を行なう予定である。

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