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第2節 

6 その他の防止対策

(1) 農業および漁業被害対策
 農業用水の汚濁による農業被害の防止に資するため、引き続き農業被害の著しい水域等について、水質汚濁と被害に関する調査を行なうとともに、昭和42年度に渡良瀬川鉱害地に設置した客土展示圃の運営を行なうほか、鉱毒害を除去するための客土事業に関する調査を引き続き行なうこととしている。
 また、農業被害を防止するための対策として考えられる事業の実施方法等に関する調査を46都道府県において引き続き実施する。
 さらに、金属鉱山等から排出される特殊有害金属による農地の汚染調査および被害防止対策を樹立するための調査を実施することとしている。
 このほか水質保全および都道府県公害防止条例に基づき、水質規制が行なわれているが、水質汚濁による農業被害がなお著しい地域において、かんがい排水施設の新設または改修およびこれとあわせて行なう客土を内容とする事業を新たに実施することとしている(5地区)。
 一方水産関係については、漁業上重要な水域の水質汚濁の実態をは握し、環境保全に関する基礎資料の整備を図るため、全国漁業環境保全基礎調査を34水域について実施するとともに、全国的な水質汚濁監視体制の整備のため、都道府県が行なう水質汚濁監視事業に必要な観測機器の購入に対し助成する(45年度17水域)。
 また、漁業上重要な水域の水産資源の維持培養を図るため、45年度は4水域を追加指定し,合計45水域の保護水面について維持管理を図ることとしている。
(2) 畜産公害対策等
 畜産公害対策としては、ア.ふん尿の土地還元の促進イ.公害防止施設の設置ウ.経営の移転が考えられる。45年度には、新たに畜産経営をより適地に移転させることにより、公害の防止と経営規模の拡大を促進するため、畜産団地造成事業を実施するほか、経営移転に対する金融措置として農林漁業金融公庫に畜産公害対策移転施設資金を設けることとしている。
 さらに、水質保全法の一部改正により、豚、鶏の飼養施設からの汚水の排出についても規制の対象とされることとなっている。これら施設からの汚水の排出の状況をは握し、今後の対策を検討するため畜舎汚水排出実態調査を実施することとしている。
 また、農林水産関係の工場排水に関する実態調査を前年度に引き続き行なうこととし、45年度はでん粉製造業、イースト製造業等7業種を対象に調査することとしている。
 このほか、農薬使用に伴う水産被害の防止については、引き続き農薬取締法に基づき、農薬の登録、表示等の適正を期するとともに、低魚毒性農薬の使用促進ならびに被害防止に関する指導を行なうこととしている。
(3) 防衛施設周辺における水質汚濁対策
 自衛隊等の使用している防衛施設周辺における水質汚濁にかかる障害については、従来同様、防衛施設周辺の整備等に関する法律(防衛施設周辺整備法)および日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律(特損法)に基づき、またこれらの法律によりがたいものにあっては行政措置により、障害防止等の措置および損失補償等の適切な対策を講ずることにしている。
(4) 鉱山排水対策
 45年度においては、鉱害監督体制を大幅に拡充するとともに、休廃止鉱山の鉱害防止の強化等の鉱害予防について、さらにいっそうの努力を注ぐことにしている。
 すなわち、鉱害監督検査については、従来に引き続き鉱害発生の危険性を内包する度合いに応じ、とくに亜鉛、カドミウムを生産する鉱山等の鉱害防止対策、休廃止鉱山実態調査等を重点として検査内容の充実とひん度の増加を図ることとし、このために必要な監督検査機器および継続観測のための自動測定装置等の充足、整備を行なう。また、前年度に引き続き鉱山保安法に基づく各鉱山の排出基準の設定、鉱山およびその周辺の水質汚濁防止に関する実態の再点検を行ない、中和処理施設の整備、沈殿池の増強、たい積場の管理強化等所要の措置について、よりきめの細かい監督指導等を行なっていくこととしている。また、鉱害防止指導書の作成等を行ない、鉱害防止に関する技術的手法の確立を図る。
 なお、休廃止鉱山の鉱害防止については、休廃止時に講ずべき恒久対策工事の方法等について調査研究を進めていく計画である。
 石炭鉱山においては、坑廃水のpHおよび懸濁物質量(SS)の2項目を中心として従来に引き続き監督規制を行なうこととしている。
 石炭鉱山が関与する水系のうち石狩川水系乙地域および大牟田水域が水質保全法の指定水域となっており、これら指定水域に坑廃水を排出する石炭鉱山に対しては、その排出基準によって監督を行なっている。
 その他の水域に対しては44年度に各産炭地別に検討会を設置し、45年度以降河川別に逐次監督基準を設定すべく目下検討を急いでいる。その間においては石狩川における基準値を参考として監督指導を強化することとしている。
 また、これらの監督の強化に並行して、坑廃水処理設備の改善、増強等について積極的に指導を行ない、その所要資金については石炭鉱害事業団による鉱害防止資金の融資のあっせんを今後とも行なうこととしている。

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