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第2節 

1 水質保全法・工場排水規制法による規制の強化

(1) 指定水域の指定および水質基準の設定等
ア 水質基準の設定、変更
 水域指定調査、水質基準調査等の水質調査結果に基づき、引き続き20水域程度について指定水域の指定および水質基準の設定を行なう。
 なお、設定後相当の年月を経ている水質基準については、設定当時の諸事情のその後における変化等に対応して改訂の要否につき検討を行なう。また、国民の健康に重大な影響を与えるカドミウムを含む排水については、所要の水質調査を実施し、必要があれば水質規制を行なう。
イ 水質調査等の実施
 従来から実施している水域指定調査(昭和45年度10水域、)、水質基準調査(一般水域13水域)、特殊問題調査(2項目)等を引き続き行なうとともに、新たに水質基準調査の一環として、重金属関係水域調査(5水域)および水質基準見直し調査(6水域)を行なうほか、未規制汚濁源調査(40水域)を行ない、水質基準の設定または変更の基礎資料とする(第2表参照)。
 重金属関係水域調査は、カドミウムを、水質基準見直し調査は木曽川、四日市、鈴鹿水域等を対象として実施する予定である。未規制汚濁源調査は、へい獣処理場、と蓄場、廃油処理施設等従来水質保全法による水質基準の規制の対象外であった事業場を、規制対象に加えることにつき同法の一部改正法案を第63回国会に提出しているが、これらの未規制汚濁源からの排水につき全指定水域を対象として所要の調査を行なうものである。
 なお、通商産業省においては、カドミウム等微量重金属を含む工場排水の採取実態調査を行ない、今後の排水規制に資するため45年度において主要工場数百について立入調査を実施する予定である。


(2) 水質保全法の一部改正
 最近におけるわが国経済の急速な成長に伴う産業活動の活発化、人口と産業の都市への著しい集中等により、公共用水域の水質の汚濁原因が多様化するとともに、水質汚濁の問題が全国的に発生する傾向にあることから、水質保全法による排水水質規制対象の範囲を拡大するとともに、水質保全行政につき国と地方公共団体との協力関係のいっそうの密接化等により、公共用水域の水質の保全のための施策をさらに強化する必要が生じてきている。このため、同法に所要の改正を行なうこととし、第63回国会に水質保全法の一部改正法案を提案しているところである。改正の要点は次のとおりである。
ア 目的等の改正
 公害対策基本法の規定に即して、本法の目的中「産業の相互協和と公衆衛生の向上に寄与すること」を「国民の健康の保護および生活環境の保全と産業の相互協和に寄与すること」に改め、これに対応して指定水域の指定要件を改めること。
イ 排水水質規制対象の拡大
 水質規制の対象として、従来からの工場鉱山等からの排水に加え、へい獣処理場、採石場、と蓄場、廃油処理施設および砂利採取場からの排水を追加するとともに、し尿処理施設、養豚場等を政令で指定して追加し、これらの事業場からの排水をも規制しうるよう措置すること。
ウ 地方公共団体との協力関係の緊密化
 水質汚濁問題は全国的な立場から統一的な対策を実施するとともに、地域の特殊性を考慮して適切な措置をあわせて講ずることが必要であることにかんがみ、水質保全行政につき、関係地方公共団体の長は、経済企画庁長官に対し必要な協力をを求め、または意見を述べることができることとするなど国と地方公共団体との協力関係の緊密化に関して規定を整備すること。
エ 都道府県知事の測定義務
 水質基準設定における指定水域の水質の保全に万全を期することを目的として都道府県知事が指定水域の水質の汚濁の状況をは握するため必要な測定を行なうものとすること。
(3) 工場排水規制法施行令の一部改正
 排水規制に万全を期するため技術進歩により新たに企業化された工場において汚水を排出する施設設などを規制の対象となる特定施設として追加するため、工場排水規制法施行令の一部改正を行なう予定である。
(4) 環境基準の設定
 公害対策基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準については、44年6月から検討を進めており、45年3月水質審議会に設定の基本方針につき諮問し、答申を得たところであるが、これについては関係各省庁の意見を調整のうえ、同年4月21日閣議決定したところである。
 水質汚濁に係る環境基準は、人の健康に関するものは、全国一律に設定後ただちに達成、維持されるべきものとし、生活環境の保全に関するものは、水域類型別に該当水域を明示したうえで、原則として5年以内または設定後ただちに達成、維持されるよう努めるべきものとしている。
 なお、各水域類型に該当する水域の明示は、今後、逐次閣議決定により行なうこととしている。

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