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第1節 

1 工業用水法による規制

 工業用水法(昭和31年制定、37年一部改正)は、工業用地下水の採取に起因する地盤沈下を防止するため、指定地域内においては、一定の基準に適合しない工業用井戸の新設を原則的に禁止するとともに、既存の工業用井戸についても、基準に適合しないものは、代替水源としての工業用水道が完成した後一年を経過すればその使用を原則的に禁止し、強制的に水源を転換させることとしており、現在までに、同法に基づく指定地域として13地域が指定されているが、その概況は第3-7-1表のとおりである。
 これら地域指定が行なわれ、かつ地下水から工業用水道への水源転換が完了した地域においては、地盤沈下は停止もしくは著しく減少しているので、既指定地域のうち、まだ水源転換の完了していない地域については、工業用水道を早急に完成させ、すみやかに水源転換を行なう必要がある。
 44年度においては、地盤沈下の進行している千葉県葛南地域(市川市および船橋市の一部地域)を工業用水法に基づく指定地域とし、9月11日政令第242号をもって追加指定を行なうとともに、代替水源としての工業用水道の完成に伴い、9月20日工業用水道の給水開始の日を定める省令を大阪府北摂地域(豊中市(一部)、吹田市(一部)、高槻市(一部)、茨木市(一部)および摂津市)および大阪府東部地域(守口市、八尾(一部)、寝屋川市(一部)、大東市(一部)、門真市、東大阪市(一部)および北河内郡四条畷町)について定め、これら地域の地盤沈下対策を進めた。
 また、水源転換の促進を図るため、企業者に対し転換のために必要な資金について、引き続き、日本開発銀行および中小企業金融金庫等により、それぞれ低利の融資を行なうとともに、取得設備について、特別償却を認めるなど、金融、税制面での助成措置を講じた。
 さらに工業用水法の指定地域以外であっても、工場の進出が急であり地下水のくみ上げにより、地下水の塩水化、地盤沈下等の弊害が生ずるおそれのある地域について、当該地域の地質、地下水の状況を詳細に調査し、地域全体の適正な地下水計画を策定することにより、地盤沈下等の未然防止を図るため、地下水利用適正化調査を実施してきており、44年度は、4,864万円の予算をもって、千葉県、京葉臨海地区、静岡県駿河湾東部地区および高知県仁淀川下流地区について調査を行なった。

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