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第5節 

2 地域暖房事業

 寒冷地の都市では、冬期間にビルや家庭の暖房から排出されるばい煙などによる大気汚染の問題が市民の大きな関心となってきている。地域暖房事業は、このような都市公害としての大気汚染の防止とエネルギーの経済的利用をおもなねらいとして、水道やガス供給事業と同じように、一つの熱供給所から地下埋設のパイプを通じ、高圧蒸気または高温水(加圧による摂氏149度以上の温水)を媒体として熱を広い地域のビルや家庭の暖房用等に供給する事業である。需要者はその用途に応じて設ける熱交換器を、パイプにつなぐことによって、その熱を暖房用等に利用できるしくみとなっている。北欧諸国等では、地域暖房の利用が盛んに行なわれている。45年2月の科学技術庁資源調査会からの火力発電所の多目的利用に関する勧告においても、火力発電の多目的利用の一手段としての地域冷暖房が、公害対策に大きく寄与できるとしている。最近、わが国でも札幌市の円山北町団地で専用の暖房施設を設けている例であるが、公害対策の観点にたつわが国最初の地域暖房事業としては、札幌市の中央地区の官公庁や企業等のビルを対象とする事業がある。この計画は、道や市、民間等からの出資による特別の北海道熱供給公社を設け、7年計画(昭和49年度完成目標)の総工費約60億円をもって、1.55km
2
内のビル283か所の地域暖房化を実施しようとするものであり、43年度より公害防止事業団が融資している(44年度までの融資額8億3,700万円)。
 なお、地域暖房完成後における大気汚染防止の効果については、40年の札幌市における冬期間の降下ばいじん量(58トン/km
2
/月)と、いおう酸化物の濃度(1.2mgSO
3
/100cm
2
/日)は、50〜60%減少することが見込まれている。

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