前のページ 次のページ

第4節 

2 基準設定の基本方針の概要

 水質汚濁に係る環境基準(以下「環境基準」という。)の設定の基本方針についての答申の概要は、次のとおりである。
(1) 環境基準設定の基本原則
 環境基準は、公害対策基本法第9条の規定に基づき、国民の健康を保護しおよび生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準として、かつ公共用水域の水質汚濁防止のために各般にわたり講ぜられる行政の目標として設定されるものであり、国民の健康の保護に係る場合は、常に維持され、また生活環境の保全に係る場合は、公共用水域が低水量以上等の通常の下にある場合において維持されるべきものとする。
 また、環境基準は、直ちに達成することが困難と考えられる場合においては、達成すべき期限を明らかにし、その期限内における達成が期せられるべきものとする。
(2) 環境基準設定の方式
 国民の健康の保護に係る環境基準は、全公共用水域につき一律に設定し、生活環境の保全に係る環境基準については、利水目的が水域ごとに多岐多様にわたること、経済の健全な発展との調和を基本的には個別水域ごとに図りつつ設定する必要があることなどにかんがみ、利水の態様等を共通にする水域群ごとに設定する。
 水域群の設定は、第3-2-2表に示すように、河川については6類型、湖沼については4類型、海域については3類型の各類型ごとに当該水域を明示することにより行なうこととし、設定にあたっては、次の事項につき十分留意するものとする。
ア 水質汚濁に係る公害が著しくなっており、または著しくなるおそれのある水域を優先すること。
イ 当該水域の現在の利用目的および将来の利用目的の推移につき配慮すること。
ウ 当該水域における水質の汚濁の状況、水質汚濁源の立地状況等を勘案すること。
エ 当該水域の水質が現状よりも少くとも悪化することを許容することとならならないように配慮すること。
オ 目的達成のための施策との関連に留意しつつ、その達成期間につき配慮すること。
 上記にいよる水域類型の指定は、水質審議会の議を経て、かつ、関係都道府県知事等の意見を聞いたうえ、閣議決定により行なうものとする。なお、できるだけ早期にかつ全国的なレベルで環境基準を設定する趣旨にかんがみ、各水域の該当する水域類型の指定が行なわれるまでの間は、関係都道府県知事が、経済企画庁長官と協議して、各水域につき水域類型を指定した場合は、これを「環境基準に準じた暫定的な行政目標値」として、政府においてもその達成に協力するものとする。


(3) 環境基準の内容とすべき環境上の条件
 国民の健康の保護に係る環境基準については,国民の健康を阻害する原因となるおそれのある項目のうち、当面、シアン、メチル水銀、有機リン、カドミウム、鉛、クロム(6価)およびヒ素の7項目について基準値を設定する。
 生活環境の保全に係る環境基準については、水質汚濁指標として適当と考えられる項目のうち、当面、河川においては、pH、BOD、SSおよび、DO湖沼においてはpH、COD、SSおよびDO、海域においては、pH、CODおよびDOの各項目について基準値を設定する。
 これらの項目についての基準値は、第3-2-2表のとおりとする。
(4) 環境基準の一環として定めるべき事項
 環境基準の一環として、上記に附加して、公共用水域の水質の測定方法、環境基準の達成機関および達成の方途ならびに環境基準達成のための施策についても合わせて定めることとする。
ア 測定方法に関しては、おおむね、日本工業規格に掲げる方法を採用するものとし、さらに、測定点の位置の選定、試料の採取、操作等につき水域の利水目的との関連を考慮しつつ最も適当と考えられる方法によるものとする。
イ また、国民の健康の保護に係る項目については、水量の如何を問わず随時測定するものとし、生活環境の保全に係る項目については、河川にあっては低水量以上の流量がある場合等通常の状態にある場合につき、6時間間隔で1日4回程度測定するものとする。
ウ 達成期間および達成の方途に関しては、国民の健康の保護に係る環境基準は、設定後直ちに達成され、維持されるよう努めるものとし、生活環境の保全に係る環境基準は、設定後直ちに達成され維持されることが可能な水域については、直ちに達成、維持されるものとし、これが困難な水域については、原則として、5年以内に達成することを目途とする。なお、水質汚濁が著しく、水質改善のための施策を総合的に講じてもこの期間内における達成が困難と考えられる水域については、暫定的な改善目標値を設定して、極力、環境基準がすみやかに達成されるよう努めるものとする。
エ 環境基準達成のための施策に関しては、これを総合的に実施することが環境基準の達成および維持のための基本的前提であるので、排出規制の強化、下水道等公害防止施設の整備の促進、土地利用および施設の設置の適正化、河川流況の改善、汚水処理技術の開発等の促進、地方公共団体に対する助成等の施策を積極的に講ずるものとする。
(5) 環境基準の見直し
 科学的な判断の向上、水域利用の態様の変化、水質汚濁源の状況の変化等に伴い適宜見直しを行ない、基準値の変更、項目の追加、各水域類型の該当水域の変更等所要の修正を行なうものとする。

前のページ 次のページ