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第4節 

1 基準設定までの経緯

 水は、自然資源の中で最も重要な物質であり、国民の飲料水、国民の生活環境、魚介類の生育環境,農業用水、工業用水等きわめて多岐にわたる利用が行なわれ、国民の福祉、産業の健全な発展にとって不可欠の要素となっている。このような資源としての水は、量の確保とともに、その水質が良好に維持されることが望ましく、この点に関して、古来わが国は、質量ともに水質資源に恵まれていたため、その資源的な重要性について、財としての価値意識がきわめて乏しかった。しかるに、昭和30年代以降のわが国経済のテンポの早い成長に伴う都市化の進展、高密度の工業開発は、水の資源としての価値認識の乏しさとあいまって、第2部の公害のの現況でみたように、水質汚濁問題の全国的な広がり、汚濁因子の多様化、複雑化をもたらしつつある。
 このような事情にかんがみ、いまや公共用水域は、国民の共通の財産として、現在から将来にわたって引き継がれるべき重要な資源であることを深く認識し、その水質を保全することが必要であり、政府、地方公共団体、企業および国民が一丸となって努力することが肝要となってきている。このため、政府としても、水質汚濁の原因となる汚水の排出規制の強化、下水道等公共施設の整備、企業・住宅団地等の立地の適正化、公害監視体制の充実等の諸般にわたる防止施策を総合的な観点から強力に推進する必要があり、その場合、これら諸施策の共通の行政目標として、公害対策基本法第9条の規定に基づく環境基準を設定することが急務となってきた。このような見地に立って、44年6月、経済企画庁長官の諮問機関である水質審議会に環境基準部会を設け、水質汚濁に係る環境基準の設定の基本方針について検討を行なってきたが、6回にわたる部会審議を行ない、45年3月31日に経済企画庁長官が諮問し、同日答申がなされた。

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