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第4節 

5 河川水の汚濁と工業用水道

 全国の工業用水使用量は、昭和42年で5,770万m
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/日に達し、そのうち約25%が水源を河川の表流水に求めている。一般に工業用水としては水温、水質の点から、地下水が最も適しているが、その過剰くみ上げは塩水混入、地盤沈下等の弊害を起こすため安全使用量にはおのずから限界があり、工業用水道源としての河川への依存度は今後ますますたかまっていくであろう。
 河川を水源とする工業用水道には、自家用のものと公共のものとがあるが、工業地帯はほとんど河川の下流付近に立地しており、こうした場所では水質の汚濁のため、自家用工業用水道の取水が困難なことが多い。公共の工業用水道に対する需要が近年非常にたかまっている背景には、こうした事実も一因となっているが、公共の工業用水道についても、良質の水を得るためには汚染の少ない河川あるいは河川の上流から導水しなければならず、工業用水道の単位当たり建設費の高騰は著しくなっている。
 また、やむなく汚濁の進んだ河川から取水している例としては、淀川、揖保川、遠賀川等があり、それらの汚染源は、淀川は都市下水、揖保川は皮革廃水、遠賀川は洗炭廃水とさまざまであるが、いずれも処理に多額の費用を要しており、しかも得られる水の質も悪い。
 工業用水道事業では、一般に薬品沈殿処理までを行なっているが、この方法は濁度(コロイドによる)の除去が主目的で、有機物、金属、イオン等の除去は期待できない。
 一方、製造装置においては、有機物、生物によるスライム(ゼラチン状のかたまり)、塩類・固形物によるスケール(湯垢)、イオンによる腐蝕等が問題となることが多いので、河川の水質がさらに悪化すれば、水処理施設の根本的な改善が必要になってくる。個々の汚濁指標と生産に与える障害との関係については、いまだ十分な研究がなされておらず、定量的なは握は困難であるが、薬品沈殿処理だけではすでに障害の発生している例もあり、こうした所では河川の汚濁は許容限界に達しているとみられる。
 工場の大規模化、コンビナート化が進みつつある現在、水系汚濁の問題を一工場の廃水問題としてとらえるだけでは不十分であり、水系全体の利水と廃水問題を一体としてとらえ、水資源の合理的利用の立場に立って対策を講じなけらばならない。

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