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第2節 

1 都市内の河川の水質汚濁の問題

 都市内の河川の水質は、急激な人口の都市集中に伴う家庭排水や産業活動の活発化に伴う産業排水の増大により、一般の河川や海域に比較して汚濁が著しく、また、最近の特徴として、大都市圏の拡大に伴い、水質汚濁現象が広域化してきている。
 都市内の河川の水質汚濁の状況は、都市環境としての河川の水質の標準が一般に生物化学的酸素要求量(BOD)で5〜10ppmとされているのに対し、東京城南水域の30〜70ppm(平均)にみられるように、とくに著しい(第2-2-2表参照)。
 なお、上水道源として利用する場合においては、シアン、フェノール類等の有害物質や悪臭物質の混入事故を起こしている例もみられる。
 このような水質汚濁により、都市内の河川は、悪臭、腐蝕等を生じ、水資源としての利用はもちろん、都市環境としての機能をも失ないつつある状況にある。
 都市内の河川の水質汚濁が一般の河川に比較してとくに著しい理由としては、
? 人口と工場等の過度の都市集中により、水質汚濁の原因となる汚水の排出量の急増がみられる反面、流路が短かく自己流量が少ないため、河川の浄化機能が小さく、河川の自己浄化が著しく困難になってきていること。


? 主要な汚濁源である一般家庭および中小企業の工場等からの排水は、これらの汚濁源に、排水前に浄化のための十分な処理を行なわせることが経済的、技術的に困難であることが一般的であるため、河川の水質の保全には下水道の整備が不可欠であるが、下水の量が多いうえに、工場、住宅等が無秩序に増加しているため、迅速かつ計画的な下水道整備が行なわれにくいこと、などがあげられる。
 以上のように、都市内の河川の汚濁問題は、一般の河川に比べて複雑な要素を多く含んでいることが指摘される。
 都市用水の需要の増大に伴い、各種工場および家庭からの排水量および汚濁負荷量の大幅な増加が予想され、その結果、都市の水質汚濁がますます進行するものと考えられる。このような事態に対処して、これらの河川の水質保全を図るためには、政府としては、排水規制、下水道整備等の水質汚濁防止対策を強力に推進し、都市の河川水質保全を図る必要がある。
 都市内の河川に排出される汚水の水質規制については、一般の河川と異なり、汚濁源がきわめて多岐多用、かつ多数であることにかんがみ、下水道の整備を前提として実施する必要があり、水質保全法に基づく排水規制にあたっては、「都市河川方式」という独特の方式によっている。
 このため、都市内の河川の水質保全対策としては、排水規制と並んで下水道の計画的整備が基本的に重要なものである。
 また、河川の浄化機能を強化するため、隅田川等にみられるように、水質汚濁対策事業として、利根川等の他の河川から浄化用水を導入すること、河川のしゅんせつをすること、ゴミ、油等の不法投棄を防止することなども必要である。
 なお、このほか、工場、住宅等の立地の適正な規制、新産業都市、工業整備特別地域等人口の集中が予想される地域における計画的な水質保全対策の実施等により、都市内の河川の水質汚濁の未然防止を図ることが必要なことはもちろんである。
 (注)「都市河川方式」とは、都市内の河川を対象とした水質基準の設定方式であり、これらの河川の水質汚濁の特徴点が、不特定多数の工場、事業場および家庭からの排水にあることに着目した方式である。この方式が一般の方式と異なる点は、下水道の整備を前提として、工場等の排水については、一律の基準値を設定すること、および新増設工場等については、とくにきびしい基準を設定することである。この方式によると、?下水道整備区域内の工場、事業場については、終末処理場の放流水の水質基準と同等の基準とし、?下水道整備計画区域については、下水道の前処理基準と同等の基準とし、?一般区域については、各河川の特殊事情を考慮しながら基準を定めることとしている。

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