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第1節 

1 水質汚濁の問題

 近年におけるわが国経済の高度成長に伴う産業活動の活発化と人口の都市集中により、公共用水域(河川、湖沼、かんがい用水路、港湾、沿岸海域、その他公共の用に供される水域)の水質の汚濁が著しくなってきている(第2-2-1表参照)。
 公共用水域の水質汚濁の原因としては、各種工場排水、鉱山廃水、都市下水、船舶からの油性排水等のほか、へい獣処理施設、と蓄場、採石場、砂利採集場、し尿処理場施設、養豚場、養鶏場、クリーニング施設、団地、病院、学校、温泉旅館等からの排水をあげることができる。
 一方、水質汚濁に起因する被害としては、国民の健康被害のほか、生活環境や各種産業への影響がみられる。
 国民の健康被害が問題となったケースとしては、工場排水中に含まれたメチル水銀化合物が魚介類を通じて人体に蓄積されたことに起因する水俣病や、鉱山排水中に含まれたカドミウムがおもな原因物質となったイタイイタイ病等があげられる。
 また、生活環境や各種産業への影響は、水道用水、工業用水、農業用水等の各種用水の汚濁による被害、水産業等の被害、船舶の外板や橋脚の腐蝕等のほか、都市における環境衛生上の影響、都市景観の価値の低下等である。
 このように、水質汚濁問題が近年クローズアップされてきたおもな原因としては、各種産業がその設備拡張を行なう際に廃水処理公害防止のための配慮を必ずしも十分払わなかったこと、人口の都市集中に対応した下水道等公害防止のための公共施設の整備が必ずしも行なわれなかったことなどが指摘される。

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