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第2節 

3 その他の水質汚濁対策

(1) 農業用水の水質汚濁対策
 農業用水の汚濁による農業被害の防止に資するため、引き続き農業被害の著しい水域等について汚濁源と被害の概況の調査、主要汚濁物質の濃度と水稲被害との関係についての調査を行なうとともに、昭和42年度に渡良瀬川鉱害地に設置した客土展示圃の運営および鉱毒害を除去するための客土事業に関する調査を引き続き行なう。また、43年度に3県においてモデル的に実施した農業被害を防止するための対策として考えられる事業の実施方法等に関する調査を、46都道府県において実施する。
(2) 沿岸および内水面の水質汚濁対策
 沿岸および内水面における水産資源の保護培養および環境保全に資するため、前年度に引き続き保護水面の指定、管理を行なうほか、漁業上重要な水域について、漁場判定図の作成等総合的な基礎調査(昭和44年度27水域)を行なうとともに、漁場等の水質状況を常時監視するため、昭和44年度は沿岸海域について都道府県の行なう水質監視測定に必要な各種自動観測機器等の設置についての助成(7海域分)を行ない、効率的な水質汚濁監視測定体制の設備充実を図る。
(3) 産業公害総合事前調査の実施
 今後急速に工業化が進む地域および現に大規模な工業開発が進行している地域ならびに新規埋立予定海域について、工場排水による産業公害を未然に防止するため、通商産業省においては、地元地方公共団体との協力の下に、昭和41年以降産業公害総合事前調査を実施してきたが、引き続き44年度においては、6水域について調査し、その結果に基づいて地方公共団体および企業に必要な改善指導を行なうことにより、水質汚濁の未然防止に資することとしている。
(4) 下水道整備の促進
 下水道整備5か年計画の第3年目である昭和44年度においては、総事業費約1,573億円(うち国費373億円)をもつて、引き続き下水道の整備を促進することとする。
 まず公共下水道については、新たに20都市を採択し、整備を進める(総事業費約1,396億円)。
 また、流域下水道については、継続7か所に加え、新たに相模川流域下水道、武庫川流域下水道を採択し、各流域の水質を保全すべく事業を推進する(総事業費約91億円)。
 さらに、特別都市下水路については、継続6か所に加え、新規に鹿島臨海工業地帯、市原市、浜田市の3か所を採択し、工場排水による水質汚濁の防止を図る(総事業費17億円)。
 なお、水質汚濁の防止対策の重点事業として、新たに仙台市広瀬川水系、広島市太田川水系について公共下水道の整備を促進する。
(5) 河川の汚泥しゆんせつ事業の実施等
 河川の水質保全対策としては、従来行なつてきた河川水質調査、汚濁対策調査を、それぞれ対象河川を追加していつそう拡充する。また浄化用水の導入、汚泥しゆんせつなどの河川汚濁対策事業についても、昭和44年度から、都市河川環境整備事業が新規に予算項目として計上しているので、事業をいつそう推進し、河川の汚濁防止を図る。
 また、汚濁の著しい河川および将来汚濁が予想される主要な河川については、流域の水質汚濁状況、汚濁発生源、被害状況等について調査を引き続き実施する。
 なお、水質汚濁規制に関する諸法令と調整を図りつつ、河川法第29条の規定に基づき、河川の清潔等に関する行為その他河川の流水等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の規制を内容とする政令を制定することを検討する。
(6) 鉱山排水対策
 鉱山から排出される坑廃水については、従来から鉱山保安法に基づき、一定の排出基準を定めて規制しているところでああるが、問題のある鉱山については、さらに必要に応じて鉱山ごとの排出基準を定めるなど監督指導を続けていくこととしている。
 特にカドミウム、水銀等の人体に重大な影響を与えるおそれのある重金属については、利水地点における水質が世界各国の現在の飲料水基準のうち最もきびしい基準に合致するよう定められた排出基準に基づいて監督指導する。
 さらに、原子吸光分析等最新の分析手法を活用して精度の高い水質検査を行ない、監督指導を強化していく。
(7) 防衛施設周辺における水質汚濁対策
 自衛隊等の使用している防衛施設周辺における水質汚濁に係る障害については、従来同様防衛施設周辺の整備等に関する法律(防衛施設周辺整備法)および日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の保障に関する法律(特損法)に基づき、またこれらの法律によりがたいものにあつては行政措置により、障害防止等の措置および損失補償等の適切な対策を講ずることにしている。昭和44年度予算は、障害防止工事の助成費が約29億2,000万円(前年度約20億1,300万円)民生安定施設の助成費が約2億6,200万円(前年度約1億1,600万円)、損失補償費が約1,500万円(前年度約900万円)である。
(8) その他の水質汚濁対策
 近年における都市の急速な外延的拡大と畜産経営の規模拡大に伴う家畜ふん尿による水質汚濁問題に対処するため、前年度に引き続き家畜ふん尿処理実験施設の設置につき指導助成するとともに、家畜ふん尿処理が環境衛生上の問題を生じ、畜産経営の移転が行なわれたケースを取り上げてその問題点と今後の対策を総合的に検討するための実態調査を新たに行なう。
 また、農薬使用に伴う水産被害の防止については、引き続き農薬取締法に基づき、農薬の登録、表示等の適正を期するとともに、低魚毒性農薬の使用促進ならびに被害防止に関する指導を行なう。

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