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第3節 公害行政の推進体制

(1) 昭和42年8月に制定された公害対策基本法は、多岐にわたる公害対策についてその理念と方向を明らかにしており、政府は、この基本法の精神に沿って、公害行政を推進している。
 政府はこれまでに述べたように大気汚染等の公害の実態に即してその防止対策等の各般の施策を講じている。その施策の実施に当たっては、公害現象そのものが大気汚染、水質汚濁、騒音等その種類により性質が異なり、また、たとえば同じ大気汚染でもその発生源により工場と自動車排出ガスとでは、その対策が異なる等きわめて多元的かつ複雑であるので、関係各省庁が専門的分野における知識と能力を生かしつつ、それぞれの権限に基づきその実態に即して適時適切な施策を講じている。
 もちろん、国民生活に重大な関連を有する公害に関する施策が、行政機関が多岐にわたるため、不統一で実効があがらないようなことがあってはならないので、政府全体として、公害対策に一貫性、総合性を確保するよう努めている。 
 
(2) この公害対策の一貫性、総合性の確保については、基本法制定前に、昭和39年3月の閣議決定に基づき、総理府に関係各省庁の次官を構成員とする「公害対策連絡議会」が設置され、この場を通じて、関係各省庁官の連絡調整が図られていたが、基本法制定後は同法第25条の規定に基づき「公害対策議会」が総理府の附属機関として設置された。
 公害対策議会は、公害防止に関する根本的かつ総合的施策の企画に関し審議し、およびその施策を推進するための組織であり、多岐にわたる公害行政の一貫性、総合性の確保を、この場を通じて確保しようとするものである。このため、公害対策会議は、内閣総理大臣を会長とし、関係各大臣を構成員としており、実質的に相当強力な総合調整機能と推進力とをこれに期待できる。この公害対策会議には、関係行政機関の事務次官を構成員とする幹事会がおかれ、同会議の活動を助けており、さらに各省連絡会議をひんぱんに開いて、各省庁間の連絡調整を図っている。
(3) 以上のように公害行政は、個々の施策の実施については、関係各省庁がそれぞれの専門的分野における知識と能力を最大限に生かしつつ、それぞれの権限に基づき、責任をもって推進する立場をとりながら、同時に「公害対策会議」を十分活用することなどによって、政府全体として公害対策の一貫性を保ち、総合的な調整推進を図ってしていくこととしている。
 なお、公害問題は、地域住民に密着した問題であるため、地方公共団体の果たすべき役割は大きい。基本法においても、地方公共団体は、国の施策に準ずる施策を講ずるほか、当該地域の自然的、社会的条件に応じた公害の防止のための必要なその他の施策を策定、実施する責務を有すると規定しており、この場合において、都道府県は、主として広域にわたる施策および市町村では十分に処理できない施策の実施ならびに市町村の行なう施策の総合調整に当たり、市町村は、一次的な行政責任を有する団体としてその地域における施策を包括的に実施するものとしている。

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