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第1節 

2 航空機騒音対策

(1) 防衛施設周辺整備法による対策
 昭和41年7月に防衛施設周辺の整備等に関する法律が制定され、自衛隊等の航空機による騒音などの被害に対と同法の対象とされることになった。すなわち、騒音による障害の防止工事に対して国が助成することとするほか、生活環境施設整備についての補助、自衛隊等が使用する飛行場の周辺の一定区域内の所在する建物などの所有者がその区域から建物などを移転する場合の移転補償、自衛隊の航空機の離着陸のひんぱんな実施による事業の経営上の損失に対する補償などが行なわれることになったのである。
 また、日本国内のアメリカ合衆国軍自体等の行為によって生ずる騒音により農業等を営んでいた者が経営上の損失をこうむったときには、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為による特別損失の補償に関する法律の規制により国がその損失を補償することになっている。
(2) 航空機騒音障害防止法による対策
ア 法律規制の経緯
 民間航空機の騒音防止対策の第1は、公共用飛行場飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(以下「航空機騒音防止法」という。)に基づく対策である。この法律は、ジェット旅客機の急増に伴う航空機騒音による公害問題が深刻化している折から、昭和41年に成立した防衛施設周辺の整備等に関する法律と同様の騒音対策を講ずるべきであるとする各方面からの強い要望が高まるとともに、航空審議会からも同様の答申があったことにかんがみ、それらの線に沿って42年第55回国会に政府提案し、同年の7月14日に成立し、8月1日に公布施行されたものである。
イ 法律の概要
 この法律の概要は、第1に運輸大臣は、航空機騒音による障害の防止のため、航空機の離着陸の経路、時間等航行の方法の指定をすることができ、航空機に遵守させる。
 第2に、特定飛行場(東京、大阪および新東京国際空港)の設置者は、周辺地方公共団体等が学校、病院等について騒音防止工事を行なう場合や、周辺の市町村が航空機騒音に対処するため、学習、集会、保育等のための共同利用施設を整備する場合にはその費用を補助するとともに、飛行場周辺の一定区域について、建物等の移転補償や土地の買取りができることとするほか、航空機の離陸または着陸のひんぱんな実施により農業等を営んでいた物がこうむった経営上の損失を補償することができることとしている。
(3) その他の措置
 航空機騒音防止対策としては、航空機騒音防止法、防衛施設周辺整備法に基づく措置のほか、行政指導により次の措置を講じている。
ア 深夜におけるジェット機の発着禁止措置
 東京国際空港については、昭和37年12月21日に閣議了解を得て、38年4月1日以降、午後11時から翌日午前6時までの間原則としてジェット機の発着を禁止しており、また、大阪国際空港については、40年11月24日に閣議了解を得て、同日以降、同様の措置をとっている。
イ 飛行経路の是正
 東京国際空港においては、A滑走路およびC滑走路の大森方面における離着陸経路は、可能なかぎり、海上を利用するようにしている。この実効を担保するため、運輸省においては、同空港の周辺にある大森第5小学校に騒音測定塔を設置している。
ウ 東京国際空港のB滑走路延長
 東京国際空港周辺の航空機騒音による被害を根本的に軽減するため、現在1,570mのB滑走路を昭和45年度までに2,500mに延長することにしている。
 この延長工事が完成すると、東京国際空港に離着陸する航空機のほとんどを海側から着陸させ、海側へ離陸させることとなり、航空機の大森側の飛行は激減する。しかし、この結果、B滑走路の多摩川寄りから海側に向かって離陸することが多くなるが、このために生ずる新たな障害に対しては、防音壁の設置等の措置を講じ、障害の防止に万全を期することとしている。
エ 自衛対等の航空機の活動に対しても、防衛上の支障をきたさないかぎり、その自主的規制および消音装置の使用等により騒音の発生をできる限り少なくすることとしており、厚木、横田飛行場における措置を例にとると次のとおりである。
(ア) 飛行方等の自主的規制
 a 日曜日の飛行訓練は最小限にする。
 b 夜間の飛行訓練は必要最小限にする。
 c 人口稠密地帯上空の飛行はできるだけ避ける。また飛行場周辺上空におけるアクロバット飛行はできるだけ避ける。
 d アフターバーナー(ジェット飛行機の推力を増強するための後部燃焼装置)の使用は、やむをえない場合を除き、必要最小限にする。
(イ) ジェットエンジンの試運転および調整の自主的規制
 a ジェットエンジンの試運転および調整には、消音装置を使用して騒音の軽減を図る。
 b 夜間のジェットエンジンの試運転および調整は、必要やむをえない場合を除き行なわない。
(4) 民間団体による活動
 
 政府は前途のように、航空機騒音対策の実施に鋭意努力しているが、国の施策にはおのずから限界があり、この対策をより充実させ、円滑に推進させるためには、官民一体の協力態勢を確立する必要がある。
 このような観点から、財団法人日本船舶振興会、日本放送協会、関係航空会社等の協力により、昭和43年8月に財団法人航空公害防止協会が設立された。この協会のおもな事業は、テレビ受信障害の防止対策としての助成金の交付、航空公害防止のための施設および環境の整備、航空公害の現状調査と、その対策の研究である。
 これらの事業のうち、テレビ受信障害対策は、東京、大阪両国際空港周辺のテレビ受信者(原則として、着陸帯の末端から、延長方向に2km、横方向に1kmの範囲内のテレビ受信者)に対し受信障害対策費として、1ヶ月当たり150円を交付するというものであり、10月1日から実施している。

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