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第3節 

2 防止事業の実施

(1)緩衝緑地事業
 公害対策の基本は、発生源対策とならんで都市の合理的な土地利用を図ることにある。土地利用計画に関連し、市街地の環境を保全するため公害発生源地域と一般市街地の間に緩衝地帯を設けることが公害対策基本法に規定されている。この緩衝地帯は、公害の防止、特に大気汚染による被害の発生の防止に大きな効用があるものである。
 公害防止に関する国の助成策の一環として、公害防止事業団では、共同福利施設(特に産業公害が発生するおそれが著しい地域において、公害を防止するため必要であって、工業、事業場の共同の利用に供し、かつその地域の工場、事業場の従業員と住民の共同の福利に資する緑地や運動上等)を建設し、割賦で譲渡する事業を実施している。この共同福利施設のうち、地方公共団体譲渡される緑地は、同時に都市計画上から要請される緩衝のための緑地でもある。
 この緩衝のための緑地は、地方公共団体が事業団から譲り受けたあとで開設すれば、法的に都市公園となる。したがって建設省では、地方公共団体の財政負担の軽減を図り、緩衝緑地事業を推進するための補助を考慮し、昭和43年度から都市計画事業の中の公園事業費補助の一部として国庫補助を実施している(第3-2-5表参照)。


(2) 地域暖房事業
 寒冷地域の都市では、冬期間に、ビルや家庭の暖房から排出されるばい煙などによる大気汚染の問題が市民の大きな関心となってきている。
 地域暖房事業は、このような都市公害としての大気汚染の防止とエネルギーの経済的利用をおもなねらいとして、従来の個別暖房から水道やガス供給事業と同じように、一つの熱供給所から地下埋設のパイプを通じ、高圧蒸気または高温水(加圧による摂氏149度以上の温水)を媒体として、熱を広い地域のビルや家庭の暖房用等に供給する事業である。需要者はその用途に応じて設ける熱交換器を、パイプにつなぐことによって、その熱を暖房用等に利用できるしくみとなっている。北欧諸国等では、地域暖房の利用が盛んに行なわれている。最近、わが国でも札幌市の円山北町団地で専用の暖房施設を設けている例があるが、公害対策の観点にたつわが国最初の地域暖房事業としては、札幌市の中央地区の官公庁や企業等のビルを対象とする事業がある。この計画は、道や市、民間等からの出資による特別の公社を設け、10年計画(昭和52年度完成目標)の総工費約40億円をもつて、1.55km
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内のビル283か所の地域暖房化を実施しようとするものであり、43年度に新たに公害防止事業団が融資することとなつた。
 なお、地域暖房完成後における大気汚染防止の効果については、40年の札幌市における冬期間の降下ばいじん量(58トン/km
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/月)と、いおう酸化物濃度(1.2mg/SO3/100cm2/日)は、50〜60%減少することが見込まれている。

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