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第2節 

3 大気汚染気象業務の整備

 大気汚染が発生し、消長する状態は、大気の下層における気象条件に密接に関係し、これに左右されるところが大きい。風の速さやその向きが関係するのはもちろんであるが、大気の安定度(空気が上下に混合しやすい状態にあるかどうかの目安を与えるもので、垂直方向の気温分布によっつ決まる。)も重要である。したがって、ばい煙発生施設の設置とか、産業都市の整備あるいは都市計画に当たっては、大気汚染を防止するために、立地条件の一つとしてそれぞれの地域の気象の特性をは握する必要がある。また、大気の汚染が著しい場合において都道府県知事がばい煙の排出を減少させる措置を効果的に行なうためには、予測される気象条件に応じた将来の汚染の動向を推測することが肝要である。
 気象庁は在来の業務の範囲内で大気汚染対策に協力してきたが、このために必要な気象業務を積極的に推進する必要を認め、他省庁の行なう施策との間の連携を保ちながら、次に掲げる目標の達成に努めた。
(1) 大気汚染対策に必要な気象予報を行なうこと
(2) この予報に必要な基本的な気象観測を行なうこと
(3) 気象庁以外のものが行なう大気汚染対策に必要な気象観測の指導を行なうこと
(4) 大気汚染に関する気象学的研究を推進すること
 当面は(1)および(2)の業務をばい煙の排出の規制等に関する法律による指定地域に関して整備することならびに(4)の事項を重点とした。
 この線に沿って昭和41年10月から昭和43年9月まで、三重県四日市市地区において、地域の局地的気象の特性を調査するための気象観測を継続した。このうち、前半の1か年は3地点について、後半の1か年はさらに2地点を加えて5地点について実施した。また、これと並行して、低層における恒久的な定常気象観測を実施するために、42年末までに日本電信電話公社四日市統制無線中継所の通信用鉄塔に風向き、風速計それぞれ2台および上下の気温と、その気温差を測定する温度計2台の設置を終わり、観測記録をおこなっている。さらに、44年3月までに、これらの観測地を四日市測候所で遠距離測定できるように伝送施設を整備中である。
 この施設が完成すると、四日市汚染地域における低層気象状態の監視が容易となり、現在四日市測候所および津地方気象台が実施している三重県の大気汚染防止対策に関する気象協力業務が強化される。

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