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第1節 

6 各種調査の実施

(1) 大気汚染に対する調査
 大気汚染の効果的な防止を図るためには、大気汚染の人体に対する影響等について科学的な調査研究を行ない、その結果に基づいて対策を講じていくことが必要である。
 昭和38年11月には、厚生・通商産業両省において、四日市地区大気汚染特別調査団が組織され、基準設定、環境測定、疫学調査の3小委員会を設けて調査がなされ、39年3月末にその警報書が提出された。この報告書では、四日市の大気汚染の特殊性にかんがみおいおう酸化物の排出基準を他の指定地域のそれよりきびしくすることを勧告するとともに、公害防止の見地から四日市市街地の改善を行なうこと、住民の健康診断の強化、企業の公害防止施設の整備についての助成措置など各分野にわたってきめの細かい勧告がなされた。また、この調査結果に基づき、四日市市の公害対策のみでなく、今後の産業公害対策の方向についてもあわせて勧告が行なわれたのであった。
 39年度に行なわれたばい煙影響調査は、大気汚染の人体に及ぼす影響今日をは握するため、大阪および四日市を調査対象地区とし、それぞれ汚染地区と非汚染地区における一般住民の健康状態について同一の手法で比較調査したものであった。40年度には引き続き、大阪、四日市地区において、学童の健康に及ぼす影響について調査が行なわれた。さらに41年度からは四日市および大阪のほか、千葉を加えて学童への影響調査が継続されている。
 自動車排出ガスについては、厚生省は、39年1月から東京都内の3か所に自動車排出ガスの測定所を設置し、一酸化炭素、窒素酸化物、いおう酸化物などを連続測定している。また、排出ガスの規制について、公衆衛生上の観点から規制の強化を図るべく、そのための基礎的資料を得るために、40年7月に東京都内で排出ガスの実態調査および人体影響調査が行なわれた。さらに41年度には、交差点周辺における汚染物質の調査、交通量の調査、自動車排出ガスの拡散現象の調査が行なわれた。
 
(2) 大気汚染防止事前調査
 大気汚染の鉱害の防止の実効をあげるためには事前予防を図ることが重要である。そのためには工業開発が予定されている地域について、事前調査を実施し、公害の発生を未然に防止した形で工業立地が進められなければならない。このような観点から、地域の特性の調査や環境汚染の影響の実験等を中心に事前調査が実施されてきた。
 昭和39年4月から沼津、三島地区について厚生および通商産業両省が行なった調査は、新しい産業開発地域における公害未然防止対策の一環として、重要な意味を持っていた。調査は、産業公害予防の観点に立っていおう酸化物による大気汚染を中心に、石油精製、石油化学工場、火力発電所の三者による石油産業コンビナート計画について関係企業の立地の適否、その他公害防止のための必要な事項について行なわれ、同年7月にその詳細な調査結果の報告と産業公害防止についての措置について勧告がなされた。
 こうした事情を背景にして、40年度から新産業都市、工業整備特別地域等今後の開発地域について公害予防の見地から、大気拡散調査を含めた厚生省による開発整備地域事前調査および通商産業省による産業公害総合事前調査が実施されたのである。また、建設省では主として広域に及ぶ公害を対象として、地域計画上の観点から広域的な土地利用計画、水利用計画等を検討するため、40年度から広域公害対策調査を実施してきた(第5章地域開発等における公害対策参照)。

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