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第3節 

1 悪臭

 公害は悪臭から始まるといわれながらも、原因の究明や施策の実施については、あまり進歩がみられない。都市における悪臭発生源の代表的なものを列挙すると次のようなものである。
(1) 化製場
(2) 潤滑油の再生工場
(3) 化学工場、特に合成樹脂の関連工場
(4) 紙パルプ工場
(5) 自動車排出ガス
(6) ドライクリーニング所
(7) ごみの集積場、清掃工場、し尿処理場
(8) 鶏糞、醤油粕、有機肥料の乾燥工程や畜舎
(9) 香辛料の製造、ハム、ソーセージの工場、香水関係工場
 これらの発生源のうち、化学関係工場から排出される窒素酸化物、アンモニア、硫化水素等成分のはっきりしているものは防止設備の設置、改修、工程管理の改善などを行なうことが比較的容易である。最近の問題として事例も多くなっている合成樹脂関係工場の臭気、クリーニング業のパークロルエチレンなどはなんらかの改善が望ましい。
 しかし、へい獣の解体、埋却、焼却を行なうへい獣取扱場、皮、臓器等から皮革、油脂、にかわ等をつくる化製場、魚の残滓から飼料、肥料を製造する魚腸骨処理工場等の悪臭については、一部施設の改善や環境の整備、防止装置等を設置しても、生産工程や成分の特殊性から根本的に解決するのはかなり困難になっている。
 さらに養豚場や養鶏場から汚水、悪臭は「畜産公害」として最近問題となってきている。これは、従来農業地帯であつたところで急速な都市化が進展することによって生じてきた問題であるが、養豚場や養鶏場の汚物を処理する技術が不十分であることと、その技術をも適用することが困難な条件にある現状では抜本的な対策をたてにくい状況にある。
 以上とは様相を全く異にするが石油化学コンビナートにおける悪臭も大きな問題である。その典型は四日市の石油化学コンビナートから発生する硫化水素その他の化学物質による悪臭問題である。悪臭は、人間に容易に感知されるので、市民生活を不断に脅かす公害である。

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