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第2節 

1 概観

 地殻運動によって、地盤の隆起、沈降は絶えず行われているが、このほか人為的な原因による地盤の沈下がある。すなわち、地下の鉱物資源の採取によるものや沖積平野における地下水のくみ上げによるものなどがあげられる。このうち公害として指摘される地盤沈下は鉱物の掘採のための土地掘削によるものを除き、主として地下水くみ上げによって生ずる地盤沈下であって、大部分沖積平野である。このようなところでは、軟弱地盤特有の自然圧密がわずかではあるが加わっているものと考えられる(第2-3-3図参照)。
 わが国の平地部では沖積平野が多く、地盤は比較的軟弱であり、このような沖積地層に含まれている地下水を急激に、あるいは大量にくみ上げることによって、地盤沈下―圧密沈下を起こしやすい。東京、大阪等の都市周辺地帯は、利根川、淀川等によって形成された沖積層の河川デルタ地帯であって、この都市の周辺の工業地帯では、工業用水源は大部分地下に求めてきており、このため昭和の初期から地盤沈下は観測されていたが、地下水くみ上げ対策について具体化するには至らなかった。 
 戦後、わが国産業は、東京、大阪を中心として急速に発展し、このため都市用水は著しく増大した。特に工業用水は、地下水に依存せざるをえなかつた結果これらの地帯では、地盤沈下はしだいに増大し、東京江東地区におけるように0m地帯はしだいに拡大した。
 かくて、工業用水、ビル用水としての地下水くみ上げを規制するとともに、工業用水道の建設を促進して地盤沈下の防止を図ってきたが、最近においては大都市周辺の住宅地の拡大に対応して、上水道水源として地下水のくみ上げが増大しており、この水源の転換を急ぐ必要があり、さらに江東地区等の低地帯においては、防災拠点の開発等による市街地の防災性の向上を図る必要がある。

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