前のページ 次のページ

第1節 

3 騒音による各種の影響

(1) 影響の種類
 騒音の影響としては不快感、日常生活の妨害、生理機能の変化、聴力障害などがあげられるが、公害問題としては聴力障害、生理機能の変化が問題となることはまれで、不快感、生活妨害として現れる場合が多い。一般に騒音の大きさが大きいほど、不快感の程度、生活妨害の程度は増す。この関係についてのアンケート調査は、標本数を十分に取れば結果にかなり再現性があるといわれている。第2-3-1図は昭和42年大阪市において行われたアンケート調査の結果で、横軸に騒音レベル、縦軸に訴えの百分率をとってその相関関係を調べたものである。騒音レベルが55〜59ホンに達すると、全体の50%程度の人が騒がしさを訴える。また「気分がいらいらする」「腹が立つ」「不愉快になる」「安静が保たれない」という情緒的影響を訴える者も55〜59ホンで約50%に達する。
 騒音の日常生活への影響としては、睡眠妨害、作業能率の低下、会話妨害に関しては、比較的よく明らかにされているが、この影響については次のとおりである。
ア 睡眠妨害
 各種の騒音を被験者に聞かし、その際生ずる脳波の覚醒反応の出現を指標としてその影響をみると、40ホンで睡眠に影響が現われている。また、その他、朝の覚醒を促進する限度は40〜45ホンであるとする研究報告がある。


イ 作業能率の低下
 騒音の作業能率に及ぼす影響については、作業能率の変化が仕事の変化、温度条件、採光、照明条件の変化等と結びついており、騒音の影響のみを取り出すことが困難なため、十分な結論が得られているとはいいが、騒音レベルが90ホン以上仕事上の誤謬の数が優位に増加するといわれている。


ウ 会話妨害
 騒音による会話の妨害は日常よく経験するところであるが、小学校において会話妨害を調査した報告書では、学校内の騒音レベルが中央値で53〜64ホン(c)であるとき、会話明瞭度は69〜86%程度であったとしている。
(2) 学童に対する影響
 昭和42年2月の文部省の調査によれば、騒音の被害学校数は、公害の全被害校の約80%に達している。
ア 騒音の発生源別被害
 学校の騒音被害を、騒音の発生源別にみると、自動車、汽車、電車および航空機による被害が特に多く、騒音被害校の大半を占めている。昭和33年に、公害としてではないが文部省は学校環境調査の中で、騒音に悩まされている学校の調査を行っているが、これによると、当時すでに騒音が問題となっている学校は857校で、42年の被害校数1,657校と比較すると、数字の上からこの10年間で約2倍になったといえる。
イ 被害の程度
 騒音がまず学校に及ぼす影響は、主として学習活動が阻害されることである。したがって、騒音が授業に与えている支障の程度を4段階に分けて、被害の程度を調査した結果は、第2-3-2図のとおりである。
 この図から、授業を中断しなければならないほどの被害を受けている学校がそれぞれ半数あり、また、学齢の低い学校ほど被害被害が大きいことがわかる。
ウ 被害教室数
 騒音による被害程度別教室数は、第2-3-6表のとおりで、授業を中断しなければならない教室数は、高等学校、特殊学校を除き、いずれも授業を中断しない教室数を上回っている。

前のページ 次のページ