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第4節 

5 農林被害

 大気汚染による農林被害は近年における産業活動の著しい進展に伴い、工場の近傍等において若干その発生をみているが被害の態様は汚染ガスの種類、濃度、気象条件、作物の種類および生育時期、栽培条件等により一様でない
 農作物・樹木等の被害を及ぼす大気中の有害物質としては二酸化いおう、弗化水素、塩素ガス、などのほか、ばいじん、ふんじんなどがあり、これらが農作物、樹木等に対して生育障害、収量の低減、品質低下等の被害を与えている
 これら有害物質の農作物および樹木に対する被害については、二酸化いおう、弗化水素、塩素ガスの場合は、主として、作物体内に吸収され、葉組織の破壊、生理代謝のかく乱等を起こすのに対し、ばいじん、ふんじんの場合は、主として葉面に付着して作物の呼吸作用、同化作用などを阻害する傾向がある
 しかし、これら被害原因の詳細については、必ずしも十分に解明されておらず、かつ、有害物質の種類および濃度と被害様相の関係についても不明の点が多い。また、これらの有害物質に対する農作物および樹木の抵抗力については、作物および樹木の種類、品種、生育時期、栽培条件等により著しく異なる
 これら有害物質による農林被害のおもな具体事例としては、次のような報告例がある
(1)二酸化いおう
 昭和40、41年千葉県市原市における排煙によるなしの果皮の変色、着果不良などの被害があるほか、40年における岡山県水島地区におけるいぐさの先枯れなどの被害が二酸化いおうの影響もあるといわれている
(2) 弗化水素ガス
 静岡県蒲原町における排煙によるみかんの落葉、昭和42年の群馬県藤岡市における排煙による桑の汚染、愛媛県新居浜市、西条市および福島県喜多方市における水稲被害等がある
(3) 塩素ガス
 宮崎県延岡市および日南市における排煙による野菜の葉の黄変等がある
(4)ふんじん
 昭和29年以降大分県津久見市におけるふんじんによるみかんの葉の黄変、42年の埼玉県日高町における降灰による桑の汚染、福島県大越町におけるふんじんによるたばこ、はくさいの品質低下、京都府城陽町におけるふんじんによる茶、果樹、野菜の品質低下等がある。

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