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第2節 

1 汚染物質別の汚染状況

(1) 降下ばいじん
 降下ばいじん量は、大気中のすす、ふんじんなど粒子状汚染物質のうち主として比較的粒子の大きい、沈降しやすい粒子の量を1か月の期間を単位としてデポジットゲージなどで測定するもので、この結果は、1km
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当たりに換算したトン数であらわされる。通常、総量で表わすが、さらにそれを分析して不溶解物質、溶解物質、タール分、灰分等を求め、成分ごとの濃度推移をも明らかにしうる
 全国の主要都市における降下ばいじん量についてみると、燃料として石灰を使用していた昭和35年頃は、工業地域で50トン/km
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/月を上回る値を示す地点が見られ、大都市においても冬季には暖房用石炭の使用量増加の影響を受け、商業、住居地域においては15〜20トン/km
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/月を上回る値が報告された。
 しかし、燃料転換や集じん設備に伴い、減少ないし横ばいの状況にあり、一部の業種の工場事業所のふんじん発生施設の周辺部で局地的に高い値を示す場合を除いては10〜15トン/km
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/月以下の値となつている
 主要都市の降下ばいじん量の経年経過をみると、第2-1-1図のように、北九州、大阪、川崎など既成の代表的工業地帯都市の減少が目だつており、特に工業地域の減少率が高い


(2) いおう酸化物
 いおう酸化物では二酸化いおう(亜硫酸ガス(SO2)ともいう。)および三酸化いおう(無水硫酸(SO3)ともいう。)が問題となる。
 現在わが国で広く使われているいおう酸化物の測定法を分類すると、1ヵ月後とに結果が出る二酸化鉛(PbO
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)法と1時間ごとに結果が出る導電率法(自動測定記録法)の2つに大別される。二酸化鉛法は、PbO2を塗布した布を円筒に巻きつけたものをシエルターに入れて大気中に1か月間放置していおう酸化物を捕集し、その結果をmg・SO3/100cm2/日を単位として表わす。この方法による測定点の設置は比較的簡便で経費もかからないので初期の段階から普及し、全国に現在640か所あり、かなりのデータが得られている。
 導電率法は比較的新しい測定法で、各地で整備されつつあり、現在約100か所の測定点がある。これは大気中のいおう酸化物の量を連続測定するもので、その結果はppmで示される
 主要都市における二酸化鉛法によるいおう酸化物の濃度をみると川崎、横浜、名古屋、尼崎などでは、1.5mg・SO3/100cm2/日以上の平均値を示している。室蘭、東京、大阪等においては3〜5を上回る年平均値を示す地点があり、1ヶ月間値として5〜10を上回る地点が出現している。
 代表的な都市の経年変化を調べると、最近においては第2-1-2図のように増加の傾向をたどつているところがあり、過去5〜6年間に横浜、尼崎等では平均値が約2倍となつている地点がある。
 昭和41、42年の導電率法によるいおう酸化物の測定記録によると、年間平均0.1ppmを上回つているのは、大阪(西淀川)、川崎(大師)の2地点、0.08ppm以上は、川崎(衛生試験所)、大阪(公衆衛生研究所、市立衛生研究所、梅香中学校、平尾小学校)の5地点、0.07ppm以上は、東京(都庁前、城東、糀谷保健所)、横浜(鶴見保健所)、大阪(東住吉保健所)、堺(錦小学校)、尼崎(国設大気汚染測定点)の7地点、0.06ppm以上は、室蘭、市原、四日市、大阪、北九州等6地点となつている。また、1時間値の最大値が0.5ppm以上となつた地点は、室蘭2、千葉3、市原6、東京5、川崎4、横浜2、四日市3、大阪7、堺3、尼崎19、和歌山2、神戸1、倉敷2、宇部1、小野田1、北九州1、大牟田1の17市45地点に及んでいる。


(3) 浮遊ふんじん
 浮遊ふんじんはデジタルふんじん計またはテープエアサンプラを用い光学的に濃度指数を求める方式の自動測定記録計等によつて測定されているが、重量濃度によつて表示する場合にはハイボリウムまたはローボリウムエアサンプラによる測定が基本となる。ただし後者は自動測定化に問題があり、前者との併用法によつて測定監視体制を整備している現状である。
 浮遊ふんじんの経年変化をテープエアサンプラによる光化学的透過率(注:数字は逆数で表わされるので透過率が高いほど汚染されている状態を示す。)を指標にして調べてみると、東京都の主要3か所(都庁前、城東保健所、糀谷保健所)では昭和37年(7か月平均)28%、38年23%、39年20%、40年20%、42年11%となり、降下ばいじん量と同様減少し、30%を上回る高濃度時の出現時間数も著しく減少している。一方デジタルふんじん計(注:浮遊ふんじんを光学的に測定し、その結果をmg/m
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に換算して表わすもの。)の測定値は、都庁前において40年0.29mg/
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、41年0.27mg/m
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、42年は0.31mg/m
3
、衛生研究所では42年0.19mg/m
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を示している。
 大阪府下15か所に設置したデジタルふんじん計による41年平均値は0.28mg/m
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、地点別年平均の最高値0.42mg/
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(堺市立衛生研究所)、最低値0.15mg/m
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(池田保健所)を示す。なお季節別には冬季の濃度が高く、日変化を調べると9時と20時を中心としたピークがあり、いおう酸化物と同様の傾向を示すが、浮遊ふんじんの方が濃度変化が大きい。
 工業開発地域の浮遊ふんじん濃度を比較するため厚生省が実施している開発地域調査の結果を第2-1-1表に示した。調査期間は原則として1週間であり、ハイボリウムエアサンプラにより測定している。東京、大阪等の大都市では0.3mg/m3を超える地点が多いが、地方の工業都市部においても0.3mg/m3を上回る平均値を示し、地点によつては0.4mg/m3を上回る値を示す点が注目される

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