化学物質関連施策を講じる上で必要となる各種環境調査・モニタリング等について、各施策の課題、分析法等の調査技術の向上を踏まえ、適宜、調査手法への反映や集積した調査結果の体系的整理等を図りながら、引き続き着実に実施します。
化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化学物質審査規制法)(昭和48年法律第117号)に基づき化学物質のリスク評価を行い、著しいリスクがあるものを第二種特定化学物質に指定します。その結果に基づき、所要の措置を講じるなど同法に基づく措置を適切に行います。
リスク評価をより効率的に進めるため、化学物質の有害性評価について、定量的構造活性相関(QSAR)等の活用について検討し、より幅広く有害性を評価することができるよう取り組みます。また、化学物質の製造から廃棄までのライフサイクル全体のリスク評価手法、海域におけるリスク評価手法等の新たな手法の検討を行います。
農薬については、改正農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき、生活環境動植物の被害防止及び水質汚濁に係る農薬登録基準の設定等を適切に実施します。また、既登録農薬の再評価について、円滑に評価を行うための事前相談に対応しつつ、国内使用量が多い農薬から順次評価を進めます。さらに、長期ばく露の影響に係るリスク評価手法の確立や、農林水産省と連携した天敵農薬の生物学的特性も踏まえた評価の導入に向けた検討を行い、農薬登録制度における生態影響評価の拡充を進めます。
環境中に存在する医薬品等については、環境中の生物に及ぼす影響に着目した情報収集を行い、生態毒性試験、環境調査及び環境リスク評価を進めます。
物の燃焼や化学物質の環境中での分解等に伴い非意図的に生成される物質、環境への排出経路や人へのばく露経路が明らかでない物質等については、人の健康や環境への影響が懸念される物質群の絞り込みを行い、文献情報、モニタリング結果等を用いた初期的なリスク評価を実施します。
リスク評価の結果に基づき、ライフサイクルの各段階でのリスク管理方法について整合を確保し、必要に応じてそれらの見直しを検討します。特に、リサイクル及び廃棄段階において、「循環型社会形成推進基本計画」を踏まえ、資源循環と化学物質管理の両立、拡大生産者責任の徹底、製品製造段階からの環境配慮設計及び廃棄物データシート(WDS)の普及等による適切な情報伝達の更なる推進を図ります。
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号。以下「化学物質排出把握管理促進法」という。)に基づく化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)及び安全データシート制度(SDS制度)の適切な運用により、化学物質の排出に係る事業者の自主的管理の改善及び環境保全上の支障の未然防止を図ります。特に、最新の科学的知見や国内外の動向を踏まえて2023年4月に改正施行された化学物質排出把握管理促進法施行令(平成12年政令第138号)及び同法施行規則(平成13年内閣府・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省令第1号)に基づき、2024年4月から開始する新規対象物質の届出について、適切かつ正確なデータが得られるよう、届出事業者等への周知等を引き続き図ります。また、PRTR制度により得られる排出・移動量のデータを、正確性や信頼性を確保しながら引き続き公表することなどにより、リスク評価等への活用を進めます。さらに、SDS制度により特定の化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供を行います。
大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づく排出規制及び有害大気汚染物質対策並びに水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)に基づく排水規制及び地下水汚染対策等を引き続き適切に実施し、排出削減を図るとともに、新たな情報の収集に努め、必要に応じて更なる対策について検討します。特に、酸化エチレン等の有害大気汚染物質について、環境目標値の設定・再評価や健康被害の未然防止に効果的な対策について検討・推進するとともに、残留性有機汚染物質(POPs)等の化学物質に関しても、知見の収集に努めます。非意図的に生成されるダイオキシン類については、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)に基づく対策を引き続き適切に推進します。事故等に関し、有害物質等の排出・流出等により環境汚染等が生じないよう、有害物質等に関する情報共有や、排出・流出時の監視・拡散防止等を的確に行うための各種施策を推進します。
汚染された土壌及び廃棄物等の負の遺産については、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号)等により適正な処理等の対応を進めます。
事業者による有害化学物質の使用・排出抑制やより安全な代替物質への転換等のグリーン・サステイナブルケミストリーと呼ばれる取組を促進するため、代替製品・技術に係る研究開発の推進等の取組を講じます。