環境研究総合推進費を核とする環境政策に貢献する研究開発の実施、環境研究の中核機関としての国立研究開発法人国立環境研究所の研究開発成果の最大化に向けた機能強化、地域の環境研究拠点の役割強化、環境分野の研究・技術開発や政策立案に貢献する基盤的な情報の整備、地方公共団体の環境研究機関との連携強化、環境調査研修所での研修の充実等を通じた人材育成等により基盤整備に取り組みます。
国立水俣病総合研究センターでは、国の直轄研究機関としての使命を達成するため、2020年4月に策定した今後5か年の計画となる「中期計画2020」に基づき、本計画に掲げる4つの重点項目を基本として、引き続き研究及び業務を積極的に推進します。特に、地元医療機関との共同による脳磁計(MEG)・磁気共鳴画像診断装置(MRI)を活用したヒト健康影響評価及び治療に関する研究、メチル水銀中毒の予防及び治療に関する基礎研究、国内外諸機関との共同による環境中の水銀移行に関する研究並びに水俣病発生地域の地域創生に関する調査・研究等を進めます。
水俣条約発効を踏まえ、水銀分析技術の簡易・効率化を図り、開発途上国に対する技術移転を促進します。水俣病情報センターについては、歴史的資料等保有機関として適切な情報収集及び情報提供を実施します。
国立研究開発法人国立環境研究所では、環境大臣が定めた中長期目標(2021年度~2025年度)を達成するための第5期中長期計画に基づき、「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」で提示されている重点的に取り組むべき課題に対応する8つの分野を設置するとともに、戦略的研究プログラムを実施するなど、環境研究の中核的機関として、従来の個別分野を越えて、国内外の研究機関とも連携し、統合的に環境研究を推進します。また、環境研究の各分野における科学的知見の創出、衛星観測及び子どもの健康と環境に関する全国調査に関する事業、国内外機関との連携・協働及び政策貢献を含む研究成果の社会実装を組織的に推進します。さらに、環境情報の収集・整理及び提供と一体的に研究成果の普及に取り組み、情報発信を強化します。加えて、気候変動への適応に関し、我が国の情報基盤の中核としての役割を担うとともに、地方公共団体等を支援し、適応策の推進に貢献します。
地方公共団体の環境関係試験研究機関は、監視測定、分析、調査、基礎データの収集等を広範に実施するほか、地域固有の環境問題等についての研究活動も活発に推進しています。これらの地方環境関係試験研究機関における試験研究の充実強化を図るため、環境省では地方公共団体環境試験研究機関等所長会議を開催するとともに、全国環境研協議会等と共催で環境保全・公害防止研究発表会を開催し、研究者間の情報交換の促進、国と地方環境関係試験研究機関との緊密な連携の確保を図ります。
環境省では、「環境研究・環境技術開発の推進戦略」(2019年5月環境大臣決定)に基づき、地域循環共生圏とSociety5.0の一体的実現に向けた研究・技術開発を推進します。
特に以下のような研究・技術開発に重点的に取り組み、その成果を社会に適用していきます。
中長期の社会像はどうあるべきかを不断に追求するため、環境と経済・社会の観点を踏まえた、統合的政策研究を推進します。
そのような社会の達成のために、国内外において新たな取組が求められている環境問題の諸課題について、新型コロナウイルス感染症の経済影響を踏まえた環境と経済の相互関係に関する研究、環境の価値の経済的な評価手法、規制や規制緩和、経済的手法の導入等による政策の経済学的な評価手法等を推進し、政策の企画・立案・推進を行うための基盤を提供します。
複数の課題に同時に取り組むWin-Win型の技術開発や、逆にトレードオフを解決するための技術開発など、複数の領域にまたがる課題及び全領域に共通する課題も、コスト縮減や研究開発成果の爆発的な社会への普及の観点から、重点を置いて推進します。また、情報通信技術(ICT)、先端材料技術、モニタリング技術など、分野横断的に必要とされる要素技術については、技術自体を発展させるとともに、個別の研究開発への活用を積極的に促進します。
研究開発を確実かつ効果的に実施するため、以下の方策に沿った取組を実施します。
技術パッケージや経済社会システムの全体最適化を図っていくため、複数の研究技術開発領域にまたがるような研究開発を進めていくだけでなく、一領域の個別の研究開発についても、常に他の研究開発の動向を把握し、その研究開発がどのように社会に反映されるかを意識する必要があります。
このため、研究開発の各主体については、産学官、府省間、国と地方等の更なる連携等を推進し、また、アジア太平洋等との連携・国際的な枠組みづくりにも取り組みます。その際、国や地方公共団体は、関係研究機関を含め、自ら研究開発を行うだけでなく、研究機関の連携支援や、環境技術開発に取り組む民間企業や大学等の研究機関にインセンティブを与えるような研究開発支援を充実させます。
研究開発の成果である優れた環境技術を社会に一層普及させていくために、新たな規制や規制緩和、経済的手法、自主的取組手法、特区の活用等、あらゆる政策手法を組み合わせ、環境負荷による社会的コスト(外部不経済)の内部化や、予防的見地から資源制約・環境制約等の将来的なリスクへの対応を促すことにより、環境技術に対する需要を喚起します。また、技術評価を導入するなど、技術のシーズを拾い上げ、個別の技術の普及を支援するような取組を実施していきます。さらに、諸外国と協調して、環境技術に関連する国際標準化や国際的なルール形成を推進します。
環境省や経済産業省では、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術の導入に向けて、火力発電所等の排ガスから商用規模でのCO2分離回収、海底下での安定的な貯留、我が国に適したCCSの円滑な導入手法の検討等を行います。
地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業により、将来的な地球温暖化対策強化につながり、各分野におけるCO2削減効果が相対的に大きいものの、民間の自主的な取組だけでは十分に進まない技術の開発・実証を強力に推進し、その普及を図ります。
環境スタートアップの研究開発・事業化を支援し、持続可能な社会の実現に向けて支援します。環境技術実証事業では、先進的な環境技術の普及に向け、技術の実証やその結果の公表等を引き続き実施します。
研究開発の成果が分かりやすくオープンに提供されることは、政策決定に関わる関係者にとって、環境問題の解決に資する政策形成の基礎となります。そのためには、「なぜその研究が必要だったのか」、「その成果がどうだったのか」に遡って分かりやすい情報発信を実施していきます。また、研究成果について、ウェブサイト、シンポジウム、広報誌、見学会等を積極的に活用しつつ、広く国民に発信し、成果の理解促進のため市民参画を更に強化します。
環境研究総合推進費や地球環境保全等試験研究費等により実施された研究成果について、引き続き広く行政機関、研究機関、民間企業、民間団体等に紹介し、その普及を図ります。
研究開発における評価においては、PDCAサイクルを確立し、政策、施策等の達成目標、実施体制等を明確に設定した上で、その推進を図るとともに、進捗状況や研究成果がどれだけ政策・施策に反映されたかについて、適時、適切にフォローアップを行い、実績を踏まえた政策等の見直しや資源配分、さらには新たな政策等の企画立案を行っていきます。
監視・観測等については、個別法等に基づき、着実な実施を図ります。また、広域的・全球的な監視・観測等については、国際的な連携を図りながら実施します。このため、監視・観測等に係る科学技術の高度化に努めるとともに、実施体制の整備を行います。また、民間における調査・測定等の適正実施、信頼性向上のため、情報提供の充実や技術士(環境部門等)等の資格制度の活用等を進めます。
新しい技術の開発や利用に伴う環境への影響のおそれが予見される場合には、環境に及ぼす影響について技術開発の段階から十分検討し、未然防止の観点から必要な配慮がなされるよう適切な施策を実施します。また、科学的知見の充実に伴って、環境に対する新たなリスクが明らかになった場合には、予防的取組の観点から必要な配慮がなされるよう適切な施策を実施します。