環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書施策第2章>第5節 野生生物の適切な保護管理と外来種対策の強化

第5節 野生生物の適切な保護管理と外来種対策の強化

1 絶滅のおそれのある種の保存

絶滅のおそれのある野生生物の情報を的確に把握し、第5次レッドリストの公表に向けたレッドリストの見直し作業を行います。第5次レッドリストは2024年度以降の公表を目指しています。人為の影響により存続に支障を来す事情のある種については、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)に基づく国内希少野生動植物種として指定し、捕獲や譲渡等を規制するほか、特に個体の繁殖の促進や生息地の整備・保全等が必要と認められる種について、保護増殖事業や生息地等保護区の指定等を行います。また、2017年の同法改正により、特定第二種国内希少野生動植物種制度や認定希少種保全動植物園等制度の創設、国際希少野生動植物種の流通管理の強化等が行われ、2018年6月から施行されたことを踏まえ、これらの制度を着実に運用していきます。

2 野生鳥獣の保護管理

近年、我が国においては、一部の野生鳥獣の個体数の増加や分布拡大により、農林水産業、生態系、生活環境への被害が深刻化しています。特に、ニホンジカ、イノシシについては、農林水産省と共に「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を2013年に策定し、個体数を2023年度までに2011年度と比較して半減させる目標を掲げています。目標達成のために、更なる捕獲を強化するとともに、鳥獣保護管理の担い手の育成、効果的な捕獲技術の開発、広域的な捕獲の強化、生息環境管理、被害防除、鳥類の鉛中毒対策等の取組を進めます。また、ジビエ利用を考慮した狩猟者の育成等の取組を進め、更なるジビエ利用拡大を図ります。

野生鳥獣に鳥インフルエンザ等の感染症が発生した場合や、油汚染事故による被害が発生した場合に備えて、野鳥におけるサーベイランス(調査)や関連情報の収集、人材育成等を行います。また、豚熱(CSF)のまん延防止のため、野生イノシシの捕獲強化、サーベイランス及びそれらに伴う防疫措置の徹底等を行います。さらに、我が国における野生鳥獣に関する感染症の実態把握や生物多様性保全の観点からのリスク評価等を踏まえ、感染症対策の観点からの鳥獣の保護及び管理を推進します。

3 外来種対策

外来種対策については、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)に基づき、特定外来生物の輸入・飼養等の規制、奄美大島のマングース防除事業等の生物多様性保全上重要な地域を中心とした防除事業やヒアリ等の侵入初期の侵略的外来種の防除事業の実施、飼養・栽培されている動植物の適正な管理の徹底等の対策を進めます。また、2022年1月の「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について」(中央環境審議会答申)を踏まえ、ヒアリ対策の強化、アカミミガメやアメリカザリガニといった大量に飼育されている外来種の対策及び地方公共団体等との連携強化に関する制度の見直し等を進めていきます。

4 遺伝子組換え生物対策

遺伝子組換え生物については、環境中で使用する場合の生物多様性への影響について事前に的確な評価を行うとともに、生物多様性への影響の監視を進めます。

5 動物の愛護及び適正な管理

2019年6月に改正された動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)の2021年6月及び2022年6月の段階的な施行に向けた必要な対応、2022年5月に全面施行となる愛玩動物看護師法(令和元年法律第50号)の施行準備、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成20年法律第83号)及び「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」の趣旨にのっとった取組の推進により、動物の虐待防止や適正な飼養等の動物愛護に係る施策及び動物による人への危害や迷惑の防止等の動物の適正な管理に係る施策を総合的に進め、人と動物の共生する社会の実現を目指します。