環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第6章>第7節 環境影響評価

第7節 環境影響評価

1 環境影響評価の総合的な取組の展開

環境影響評価法(平成9年法律第81号)の対象となる風力発電所の規模要件について、最新の知見に基づき環境影響評価法の対象事業との公平性の観点を踏まえた検討を行い、2021年10月に環境影響評価法施行令(平成9年政令第346号)を改正するとともに、地域の環境保全上の支障のおそれを防止等するための所要の経過措置を講じました。また、2021年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」において、効果的・効率的なアセスメント等の風力発電に係る適正な制度的対応の在り方について、2022年度に結論を得ることとされ、環境省及び経済産業省は、2021年度から具体的な検討を開始しました。

近年、太陽電池発電所及び風力発電所の事業形態や土地利用、構造等の多様化が進んでおり、例えば、実態は1つの事業にもかかわらず事業の分割を行うことなどにより、環境影響評価法の対象を逃れているのではないかと疑われる事案等が生じています。環境省及び経済産業省は、法に基づく環境影響評価手続が適切に行われるよう、太陽電池発電所及び風力発電所について環境影響評価の対象となるべき事業の考え方を取りまとめ2021年9月に公表しました。また、太陽電池発電所について事業特性や地域特性に応じた合理的な環境影響評価を一層推進するため、造成地やゴルフ場跡地等の開発済みの土地における事業に関して環境影響評価を行う項目の合理的な選定の考え方を示したガイドラインを2021年6月に公表しました。

また、脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギーの主力電源化への取組の一環として、地域の関係者間で協議しながら、環境保全、事業性、社会的状況に係る情報の重ね合わせを行い、円滑な再生可能エネルギー導入のための促進エリア設定等に向けたゾーニング等を支援する事業を実施しました。

さらに、情報アクセスの利便性を向上させて、国民と事業者の情報交流の拡充及び事業者における環境影響の予測・評価技術の向上を図るため、環境影響評価法に基づき事業者が縦覧・公表する環境影響評価図書について、法定の縦覧・公表期間を過ぎた場合においても図書の閲覧ができるよう、事業者の任意の協力を得て、環境省ホームページにおいて環境影響評価図書を掲載する取組を進めました。

2 質が高く効率的な環境影響評価制度の実施

(1)環境影響評価法の対象事業に係る環境影響審査の実施

環境影響評価法は、道路、ダム、鉄道、飛行場、発電所、埋立て・干拓、土地区画整理事業等の開発事業のうち、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価の手続の実施を義務付けています。環境影響評価法に基づき、2022年3月末までに計764件の事業について手続が実施されました。このうち、2021年度においては、新たに48件の手続が開始され、また、12件の評価書手続が完了し、環境配慮の確保が図られました(表6-7-1)。

表6-7-1 環境影響評価法に基づき実施された環境影響評価の施行状況

近年、特に審査件数の多い風力発電事業については、騒音・風車の影といった生活環境への影響や、鳥類や植物・生態系など自然環境への影響等の観点に加え、地域との共生の観点から環境大臣意見を述べました。

また、既設の石炭火力発電設備の段階的なゼロ・エミッションを目指す事業については、2021年10月に閣議決定した国の目標・計画等を踏まえて審査しました。2021年12月時点では、国の目標・計画を達成するための政策的対応等について検討が進められている状況であることから、経済産業省に対しては、これを確実に達成するために、電力業界が計画的に温室効果ガス削減に取り組む自主的枠組みに関する早期の取組を促し、政策的対応について必要な検討を進めることを求めるとともに、事業者に対して、国の目標・計画と整合した対応の道筋が描けない場合には、事業実施の再検討を含め、あらゆる選択肢を検討することなどを求める環境大臣意見を述べました。

さらに、バイオマス発電所設置事業については、燃料の調達に当たり、第三者認証の取得等により、持続可能性を確保することを求めるとともに、燃料の製造、加工も含む本事業のライフサイクル全体の温室効果ガス排出量を算定し、その結果を踏まえ、必要に応じて事業計画の見直しを行うことなどを求めました。

加えて、2011年の環境影響評価法の改正により新たに導入された報告書手続きについて、那覇空港滑走路増設事業に係る報告書が2021年6月に主務大臣に送付されました。審査に当たっては、本事業の実施に伴い講じた環境保全措置の経緯、事後調査の結果等を確認し、2021年8月に環境大臣意見を述べました。

(2)環境影響評価に係る情報基盤の整備

質の高い環境影響評価を効率的に進めるために、環境影響評価に活用できる地域の環境基礎情報を収録した「環境アセスメントデータベース“EADAS(イーダス)”」において、情報の拡充や更新を行い公開しました。