環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第4節 ライフサイクル全体での徹底的な資源循環

第4節 ライフサイクル全体での徹底的な資源循環

1 プラスチック

容器包装の3R推進に関しては、3R推進団体連絡会による「容器包装3Rのための自主行動計画2020」(2016年度~2020年度)に基づいて実施された「事業者が自ら実施する容器包装3Rの取組」と「市民や地方自治体など主体間の連携に資するための取組」について、フォローアップが実施されました。さらに、2025年度までの5年間の取組目標、項目を定めた「容器包装3Rのための自主行動計画2025」が策定されました。

2021年6月にプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(令和3年法律第60号)が成立し、2022年4月1日に施行されました。この法律は、プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのライフサイクル全般にわたって、3R+リニューアブルの原則にのっとり、あらゆる主体のプラスチックに係る資源循環の促進等を図るためのものです。同法を円滑に施行するとともに、引き続き「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月31日消費者庁・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省策定)で定めたマイルストーンの達成を目指すために必要な予算、制度的対応を行いました。また、化石由来プラスチックを代替する再生可能資源への転換・社会実装化及び複合素材プラスチック等のリサイクル困難素材のリサイクル技術・設備導入を支援するための実証事業を2021年度も継続実施しました。中国が2017年12月末から廃プラスチックの輸入を禁止したことを受けて、日本国内の廃プラスチックのリサイクル体制の整備を後押しすべく、プラスチックリサイクルの高度化に資する設備の導入を補助する「省CO2型リサイクル等高度化設備導入促進事業」及び「脱炭素社会構築のための資源循環高度化設備導入促進事業」を2021年度も実施しました。さらに、可燃ごみ指定収集袋など、その利用目的から一義的に焼却せざるを得ないプラスチックについて、カーボンニュートラルであるバイオマスプラスチックの導入を促進するため、地方公共団体向けのガイドラインを策定・周知しました。

2 バイオマス(食品、木など)

東日本大震災以降、分散型電源であり、かつ、安定供給が見込める循環資源や、バイオマス資源の熱回収や燃料化等によるエネルギー供給が果たす役割は、一層大きくなっています。

このような中で、主に民間の廃棄物処理事業者が行う地球温暖化対策を推し進めるため、2010年度の廃棄物処理法の改正により創設された、廃棄物熱回収施設設置者認定制度の普及を図るとともに、廃棄物エネルギーの有効活用によるマルチベネフィット達成促進事業を実施しました。2021年度は民間事業者に対して、6件の高効率な廃棄物熱回収施設、1件の廃棄物燃料製造施設及び1件の廃棄物燃料受入施設の整備を支援しました。

未利用間伐材等の木質バイオマスの供給・利用を推進するため、木質チップ、ペレット等の製造施設やボイラー等の整備を支援しました。また、未利用木質バイオマスのエネルギー利用を推進するために必要な調査を行うとともに、全国各地の木質バイオマス関連施設の円滑な導入に向けた相談窓口・サポート体制の確立に向けた支援を実施しました。このほか、木質バイオマスの利用拡大に資する技術開発については、スギ材由来のリグニンを化学的に改質させて、工業材料として供給できる素材に変換する研究を推進しました。また、農山漁村におけるバイオマスを活用した産業創出を軸とした、地域づくりに向けた取組を支援しました。

バイオ燃料は化石代替燃料としてCO2削減、エネルギー源の多様化、新たな産業創出の観点からも重要であるため、カーボンリサイクル技術等を活用したバイオジェット燃料生産技術開発事業において、持続可能な航空燃料(SAF)の生産技術の開発を実施しました。

国連機関である国際民間航空機関(ICAO)において、2020年以降は国際航空分野におけるCO2排出量を増加させないという削減目標が設定されており、我が国では三つの技術開発を進めました。[1]早期の市場確立が期待できるATJ技術、[2]多様な原料利用の拡大可能性があるガス化・FT合成技術、[3]カーボンリサイクル技術を活用した微細藻類の大量培養技術を含むHEFA技術を基にした、SAFの一貫製造プロセスの確立のため、実証事業等を行いました。

下水汚泥によるエネルギー利用の推進により、2020年度末時点における下水処理場での固形燃料化施設は23施設、バイオガス発電施設は136施設であり、前年同時期より新たに合わせて21施設が稼働しました。また、下水処理場に生ごみや刈草等の地域のバイオマスを集約した効率的なエネルギー回収の推進に向け、具体的な案件形成のための地方公共団体へのアドバイザー派遣や、2020年度に創設した下水道リノベーション推進総合事業により、下水汚泥資源化施設の整備及び下水道資源の循環利用に係る計画策定を支援しています。このほか、下水道由来肥料等の利用促進を図るため、優良取組・効果等を下水道管理者や農業従事者に対して相互発信するための会合の開催など、食と下水道の連携に向けた「BISTRO下水道」を推進しました。

食品廃棄物については、食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の発生抑制の目標値を設定し、その発生の抑制に取り組んでいます。また、国全体の食品ロスの発生量について推計を実施し、2019年度における国全体の食品ロス発生量の推計値(約570万トン)を2021年11月に公表するとともに、家庭から発生する食品ロスの発生量の推計精度向上のため、市町村における食品ロスの発生量調査の財政的・技術的支援を行いました。

2021年10月には豊田市及び全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会の主催、環境省を始めとした関係省庁の共催により、消費者・事業者・自治体等の食品ロス削減に関わる様々な関係者が一堂に会し、関係者の連携強化や食品ロス削減に対する意識向上を図ることを目的として、第5回食品ロス削減全国大会を豊田市で開催しました。

食品リサイクルに関しては、食品リサイクル法の再生利用事業計画(食品関連事業者から排出される食品廃棄物等を用いて製造された肥料・飼料等を利用して作られた農畜水産物を食品関連事業者が利用する仕組み。以下「食品リサイクルループ」という。)を通じて、食品循環資源の廃棄物等の再生利用の取組を促進しました。

3 ベースメタルやレアメタル等の金属

廃棄物の適正処理及び資源の有効利用の確保を図ることが求められている中、小型電子機器等が使用済みとなった場合には、鉄やアルミニウム等の一部の金属を除く金や銅等の金属は、大部分が廃棄物としてリサイクルされずに市町村により埋立処分されていました。こうした背景を踏まえ、小型家電リサイクル法が2013年4月から施行されました。

2018年度に小型家電リサイクル法の下で処理された使用済小型電子機器等は、約10万トンでした。そのうち、国に認定された再資源化事業者が引き取った使用済小型電子機器等は約9万2,000トンであり、そのうち4,000トンが再使用され、残りの8万8,000トンから再資源化された金属の重量は約4万6,000トンでした。再資源化された金属を種類別に見ると、鉄が約4万トン、アルミが約3,000トン、銅が約2,300トン、金が479kg、銀が約5,441kgでした。

このような中で、使用済製品に含まれる有用金属の更なる利用促進を図り、もって資源確保と天然資源の消費の抑制に資するため、レアメタル等を含む主要製品全般について、回収量の確保やリサイクルの効率性の向上を図る必要があります。このため、脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業において、電子基板や車載用リチウムイオン電池から、リチウムやコバルト等の有用金属を回収する実証的な取組等を支援しました。

広域認定制度の適切な運用を図り、情報処理機器や各種電池等の製造事業者等が行う高度な再生処理によって、有用金属の分別回収を推進しました。

4 土石・建設材料

長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックを形成するため、長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20年法律第87号)に基づき、長期優良住宅の建築・維持保全に関する計画を所管行政庁が認定する制度を運用しています。この認定を受けた住宅については、税制上の特例措置を実施しています。なお、制度の運用開始以来、累計で約124万戸(2021年3月末時点)が認定されており、新築住宅着工戸数に占める新築認定戸数の割合は12.5%(2020年度実績)となっています。

5 温暖化対策等により新たに普及した製品や素材

使用済再生可能エネルギー設備(太陽光発電設備、太陽熱利用システム及び風力発電設備)のリユース・リサイクル・適正処分に関しては、2014年度に有識者検討会においてリサイクルを含む適正処理の推進に向けたロードマップを策定し、2015年度にリユース・リサイクルや適正処理に関する技術的な留意事項をまとめたガイドライン(第一版)を策定しました。また、2014年度から太陽電池モジュールの低コストリサイクル技術の開発を実施し、2015年度からリユース・リサイクルの推進に向けて実証事業や回収網構築モデル事業等を実施しています。また、2018年には総務省勧告(2017年)や先般の災害等を踏まえ、ガイドラインの改定を行い(第二版)を策定しています。さらに、2021年には太陽電池モジュールの適切なリユースを促進するためのガイドラインを策定しています。