環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組>第1節 生物多様性条約COP15及び生物多様性国家戦略

第2章 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組

第1節 生物多様性条約COP15及び生物多様性国家戦略

1 生物多様性条約COP15に向けた取組

2021年5月の日英首脳会談において菅義偉内閣総理大臣(当時)は、2030年までに生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせるため、野心的な「ポスト2020生物多様性枠組」の策定と完全な実施、新型コロナウイルス感染症からのグリーン復興をはじめとする10の約束事項からなる首脳級イニシアティブ「リーダーによる自然への誓約(Leaders’ Pledge for Nature)」への参加を表明しました。

さらに2021年6月に開催されたG7サミットでは、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるという世界的な任務を支える「G7 2030年自然協約」を採択しました。この自然協約においてG7各国は、2030年までに世界の陸地及び海洋の少なくとも30%を保全又は保護するための新たな世界目標を支持すること、また、国内の状況に応じて、少なくとも同じだけの割合の自国の陸水域と内水面を含む土地と沿岸・海域を効果的に保全し又は保護することにつき範を示すこと等を約束しました。

これらも踏まえて、我が国は野心的なポスト2020生物多様性枠組の策定に積極的に貢献しており、いずれもオンラインで開催された2021年5月から6月にかけての生物多様性条約補助機関会合、同年8月から9月にかけてのポスト2020生物多様性枠組に関する第3回公開作業部会(OEWG3)において、同枠組に記載すべき内容やその科学的根拠、実施報告、評価及びレビューのための仕組み等について、より効果的なものとなるように意見を表明しました。

2021年9月には、国際自然保護連合(IUCN)世界自然保護会議がフランス・マルセイユにて開催されました。環境省からは現地又はオンラインにて参加し、ポスト2020生物多様性枠組に関するイベントへの参加やポスター展示を通じて我が国の取組を発信しました。

2021年10月にオンラインを中心に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15。以下、締約国会議を「COP」という。なお、本章におけるCOPは、生物多様性条約締約国会議を指す。)第一部のハイレベルセグメントに我が国から参加した山口壯環境大臣は、ポスト2020生物多様性枠組への期待を述べたほか、さらにその実施にも貢献するため、生物多様性日本基金の第2期として総額1,700万ドル規模での途上国支援を行うこと等を表明しました。

2 生物多様性国家戦略

「ポスト2020生物多様性枠組」の採択後、速やかに行動に移せるよう、国内において次期生物多様性国家戦略の検討を開始しています。2021年7月に有識者からの次期生物多様性国家戦略策定に向けた提言として「次期生物多様性国家戦略研究会報告書」が発表されました。この報告書では、2030年までに取り組むべき主なポイントとして、国土全体の生態系の健全性の確保、社会課題への自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)の適用、ビジネスやライフスタイル等の社会経済のあり方の変革を挙げ、また、「生物多様性国家戦略」の構造・目標・指標を大幅に見直して、目標の達成状況の明確化と多様な主体の行動を促すことが必要と指摘しています。

環境省では、2021年8月に中央環境審議会自然環境部会に「生物多様性国家戦略」の変更について諮問し、これを審議するために生物多様性国家戦略小委員会を設置しました。2021年度は同小委員会を4回開催し、「次期生物多様性国家戦略研究会報告書」や現在検討が進められているポスト2020生物多様性枠組の議論も踏まえながら、関係省庁やNGO、農林水産業関係者などからもヒアリングを行うなど、様々なステークホルダーの参加を得つつ次期生物多様性国家戦略の策定に向けた検討を進めました。