環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第2章>第4節 海洋における生物多様性の保全

第4節 海洋における生物多様性の保全

1 沿岸・海洋域の保全

2016年4月に公表した「生物多様性の観点から重要度の高い海域」の抽出結果を踏まえ、沖合の海底の自然環境の保全を図るため新たな海洋保護区(「沖合海底自然環境保全地域」)制度の措置を講ずる自然環境保全法の一部を改正する法律案を2019年3月に閣議決定し、国会に提出しました。

有明海・八代海等における海域環境調査、東京湾等における水質等のモニタリング、海洋短波レーダを活用した流況調査、水産資源に関する調査等を行いました。

2016年3月に策定した「サンゴ礁生態系保全行動計画2016-2020」に基づき、重点課題に対応するモデル事業の実施など保全の取組を推進しました。また、国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)が2018年を3回目の「国際サンゴ礁年」に指定したことから、国内でも、国際サンゴ礁年2018活動登録制度やSNSを通じた情報共有、国際サンゴ礁年2018オフィシャルサポーター制度の取組を実施しました。

2 水産資源の保護管理

漁業法(昭和24年法律第267号)及び水産資源保護法(昭和26年法律第313号)に基づく採捕制限等の規制や、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律(平成8年法律第77号)に基づく海洋生物資源の採捕量の管理及び漁獲努力量に着目した管理を行ったほか、[1]「資源管理指針・計画」の推進、[2]外来魚の駆除、環境・生態系と調和した増殖・管理手法の開発、魚道や産卵場の造成等、[3]ミンククジラ等の生態、資源量、回遊等の実態把握及び資源回復手法の解明に資する調査、[4]ヒメウミガメ、シロナガスクジラ及びジュゴン等の原則採捕禁止等、[5]サメ類の保存・管理及び海鳥の偶発的捕獲の対策に関する行動計画の実施促進等、[6]混獲防止技術の開発等を実施しました。

海洋生物の生理機能を解明して革新的な生産につなげる研究開発と生物資源の正確な資源量の変動予測を目的に生態系を総合的に解明する研究開発を実施するとともに、国立研究開発法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業として海洋生物の観測・モニタリング技術の研究開発を推進しました。

3 海岸環境の整備

海岸保全施設の整備においては、海岸法(昭和31年法律第101号)の目的である防護・環境・利用の調和に配慮した整備を実施しました。

4 港湾及び漁港・漁場における環境の整備

みなとの良好な自然環境を活用し、自然環境の大切さを学ぶ機会の充実を図るため、地方公共団体やNPO等による自然体験・環境教育プログラム等の開催の場ともなる緑地・干潟等の整備を推進するとともに、海洋環境整備船による漂流ごみ・油の回収を行いました。また、2013年に策定した「プレジャーボートの適正管理及び利用環境改善のための総合的対策に関する推進計画」に基づき、放置艇の解消を目指した船舶等の放置等禁止区域の指定と係留・保管施設の整備を推進しました。更には、海辺の自然環境を活かした自然体験・環境教育を行う「海辺の自然学校」等の取組を推進しました。

漁港・漁場では、水産資源の持続的な利用と豊かな自然環境の創造を図るため、漁場の環境改善を図るための堆積物の除去等の整備を行う水域環境保全対策を実施したほか、水産動植物の生息・繁殖に配慮した構造を有する護岸等の整備を総合的に行う「自然調和・活用型漁港漁場づくり推進事業」を実施しました。また、藻場・干潟の保全・創造等を推進したほか、漁場環境を保全するための森林整備に取り組みました。大規模に衰退したサンゴの効率的・効果的な保全・回復を図るため、サンゴ礁の面的な保全・回復技術の開発実証サンゴの有性生殖による種苗生産を中心としたサンゴ増殖技術の開発に取り組みました。

5 海洋汚染への対策

第4章第6節を参照。